人気サロンの“らしさ”を紐解く! 美容師の固定観念を打ち破れ! 唯一無二の世界観をつくるイッシキケンタ率いる新星サロン「nenen」【前編】
数々のクリエイティブコンテストで存在感を発揮し、美容業界にとどまらない活躍をしているイッシキケンタさん。2022年に独立を果たし、原宿に「nenen」を立ち上げました。
「流行るものではなく、自分のつくりたいものをつくる」というスタンスでありながら、しっかりとお客さまにも支持されている稀有な存在であるイッシキさん。そのメンバーである久野さんと下岡さんを交え、どんなサロンを、どんな思いでつくったのか聞きました。
インタビューは前後編の2本立て。前編では、nenenのコンセプトやメンバーの魅力、2023年のトレンド予想について語っていただきました。
SPECIAL CONTENTS
2023.05.11
nenen メンバープロフィール紹介
代表
イッシキ ケンタ
京都府出身。大阪府内の美容室で働きながら高津美容専門学校通信課程で美容師免許を取得。業界誌を賑わすクリエイティブな美容師を目指し、上京。La familia に入社し、サロンワーク、クリエイティブワークの技術を磨く。目標だった業界誌掲載やヘアコンテスト入賞などを実現。トレンドを取り入れつつ、オリジナルの世界観に落とし込む作品が人気で、同業者からの評価も高い。2022年11月にnenenオープン。
店長/久野詩津香(ひさの しづか)
福島県出身。パリ総合美容専門学校卒業。新卒で都内の大型サロンに就職。一人ひとりとじっくり向き合い、お客さまにキレイを提供する働き方をしたいと考えて、La familia に入社。イッシキ ケンタ氏に師事する。nenenのオープニングメンバーとしてジョインし、現在は店長を務めている。
下岡悠太(しもおか ゆうた)
広島県出身。15歳から大阪にうつり、美容室で働きながら大阪美容専門学校の高校併学コースで学び、約5年間の美容師生活を送る。その後、イッシキケンタ氏の活動や、作風に惹かれてLa familia に入社。nenenのオープニングメンバーとしてジョインし、主にカラーリングで存在感を発揮している。クリエイティブコンテストのファイナリストにもノミネートする注目のルーキー。
縁と円を重ねる「nenen」
bangs編集部(以下、編集部):「nenen」というサロン名がとてもユニークですね!
イッシキケンタ(以下、イッシキ):出会いの“縁”や丸い“円”の意味を込めた名前です。お客さまが鏡の前で新しい自分に出会える場所にしたいと思っています。お客さまが、お家で扱いやすいスタイルにするのは大前提として、「今まで出会ったことがなかった自分に出会う感動」を与えられるデザイン提案をする集団でありたいんですよ。
イッシキ:お客さまに「ここにきてよかった」「この人に任せてよかった」と感じていただき、人生をよくする力が美容師にはあると思います。美容師は、そんな特別な立ち位置の仕事です。しかも、2、3カ月に1回会うわけだから、友だちよりも頻繁に会っているかもしれない。僕はお客さまに生涯よりそう美容師になりたいし、nenenはそういう集団でありたいです。
丸の円はくるくると回り続けるから、始まりと終わりがないじゃないですか。どこからでも始められるし、終わりもない。ずっと新しいことにチャレンジしたり、技術を磨いたりする集団という意味もあります。縁と円のふたつを大事にしたくて「nenen」にしたんです。
編集部:ということはスタッフさんとの縁も大事にしているのかなと思いますが、どういう経緯で一緒に働くことになったのですか。
久野詩津香(以下、久野):前職のサロンが同じで、5年くらい一緒に働いていたんですよ。下岡くんとも1年半くらい一緒に働いていて…。
イッシキ:前のサロンのオーナーには独立するにあたり、背中を押して応援してもらいました。その上スタッフまで連れていくのは迷惑かけることになるしちょっと…と思っていたのですが。
下岡悠太(以下、下岡):僕がイッシキさんと働きたいと思っていて、前職のオーナーから「一度、イッシキに連れて行ってほしいと行ったら?」と言ってもらったんですよ。
イッシキ:結局、「やるからには絶対に成功して欲しい」っていうことで、オーナーと幹部に背中を押されて、下岡も仲間に加えさせてもらえたんです。
ただヘアデザインするだけの集団ではない
編集部:お二人がイッシキさんと働きたいと思った理由は?
久野:イッシキさんの人柄の部分が大きいです。自分の作品づくりだけではなく、後輩にしっかり時間を使って説明したりだとか、技術力だけではなく「この人から学びたい」と思わせる魅力があるんです。あとはやはり私も作品づくりに力を入れたいと思ったことも大きかったかな。
下岡:僕は美容師としてのリスペクトもありますし、美容師以外の分野で活躍する姿にも憧れています。僕自身がこれからやっていきたいことに通じる部分があるし、nenenは美容だけにとどまらない将来の話ができる環境なので、とてもワクワクしました。
編集部:普通の美容室とちょっと違う展開を考えているということですね。
イッシキ:今って多様化の時代だと思うんです。美容師をしながら撮影などフォトグラファーとして活動する人もいますし。もちろん、サロンワークではストイックに技術を追い求めるべき。その上で、お客さまの満足度をしっかり上げつつ、他の武器を持ちたいというのなら、応援したいなと僕は思っています。アクセサリーをつくるのでもいいし、文章を書くのでもいいですけれど、将来的にそういう子が出てきたら応援できるようなサロンにしたい。
僕自身、ビジュアルブックのようなものをつくるのが好きで、ジュエリーブランドの撮影に携わったことがあります。美容師の場合、コレクションの撮影にヘアメイクとして呼ばれるのがありがちなパターンだと思いますが、僕は「感性を借りたい」と言っていただき、ディレクションも、撮影も、ヘアメイクも、全て担当させてもらったんです。「おしゃれなものを作りたいので力を貸してくれませんか」とブランドのブックや広告に携わったこともありました。きっと、下岡くんがやりたいことにも近いんじゃないかなと思います。
編集部:ディレクターの立ち位置で活躍できるのは強みですね! ヘアサロンとして「nenenの方向性はこれだよね」というものがあったりしますか?
イッシキ:うーん、ほかのサロンはストリートだったり、ポップだったり、カジュアルだったり、どこかのカテゴリーに当てはまるのかもしれないんですけれど、僕たちはあんまりそういうのはなくて。
ただ、カジュアルすぎるものより、ちょっと上品さがあるスタイルが3人とも好きかな。グランジっぽいけれど、なんか上品とか…たとえば古着が好きなんですけれど、クラシカルで上品なものが好きなんですよね。でも、上品だけど、少し崩すというか…。
久野:そう。上品すぎないんですよね。
イッシキ:あとは、どんなスタイルにしても必ず、その人の雰囲気に似合わせるところは3人とも共通なんじゃないかなと思っています。
キーワードは「ポップからダーク」2023年のトレンド予想
編集部:2022年の傾向から予測して、2023年はこんなスタイルが人気になるんじゃないかという予想を3人にしていただきたいと思っています。いかがでしょうか?
イッシキ:2022年はポップでカジュアルな軽い質感が流行っていたと思います。ペールトーンのカラーがその代表かなと思うけれど、めっちゃ明るい色とか、淡いピンクとかが支持されていました。
それに比べると、昨年冬くらいからアンダーグラウンドな雰囲気というか、ファッションも黒ベースの人が増えてきたと感じていて。ヘアに関しても、軽い質感というより、ダークトーンにレイヤーが入って動きがあるスタイルとか、そういう感じの女性像が増えてきそうだなという印象です。
僕も、最近は黒を基調にして、そこにデザインカラーを入れるようなスタイルをつくりますし、昨年は薄い緑や青をよくやっていましたが、今年は深い赤や青を組み合わせることが増えました。ただ髪色が暗いだけだと重くなってしまうので、それにレイヤーを入れて動きを出していくという感じですね。
久野:個人的には、一昨年は切りっぱなしの重めのラインが流行って、昨年はレイヤーが流行っていたと思います。さらに、顔まわりのプツッとしたカットラインがはっきりしている毛先も人気がありました。
今年は、カットに関しては例えばボブでも前上がりにするとか、顔まわりだけ少し軽くして質感の差を出すなど人気が出そうかなと。デザインカラーも、これまでは内側に色を入れるのが普通でしたが、外側にあえてデザインを入れることも考えられると思います。
久野:今までナチュラルだったお客さまがどんどんモード寄りになってきていると感じます。なので、服装に合わせることもそうだし、どこかに目を引くポイントがあるようなスタイルが流行りそうな気がします。
メイクもこれまでアイラインをひかないのがかわいいみたいな文化があったんですけれど、最近はしっかり引く人が増えてきた感じがします。なので、アイラインをしっかり引くんだったら、前髪が軽いよりは重めのワイドのほうがモード寄りにできるし、そういう風にしたいというお客さまも増えてくる予感がしています。
下岡:僕のお客さまはカラーを楽しみたい方が多いです。ここ最近の薬剤の進化は凄まじいものがあり、一昔前では残留を気にして使いづらかった赤や黒などのカラーリングが増えてきたように思います。
さらにディープなカラーを求めるモードっぽい方向に進む人と、青紫や赤紫などの新しい色味を求める人が増えてくるのかなと。深みがあり、なおかつ鮮やかなカラーの人が増えつつあると今感じているところです。
-後編は、実際にnenenのみなさんが生み出すヘアスタイルを紹介! 3人のスタイリストの一押しスタイルとは? お楽しみに!
>後編へ続く
イッシキ ケンタ
京都府出身。大阪府内の美容室で働きながら高津美容専門学校通信課程で美容師免許を取得。業界誌を賑わすクリエイティブな美容師を目指し、上京。La familia に入社し、サロンワーク、クリエイティブワークの技術を磨く。目標だった業界誌掲載やヘアコンテスト入賞などを実現。トレンドを取り入れつつ、オリジナルの世界観に落とし込む作品が人気で、同業者からの評価も高い。2022年11月にnenenオープン
久野詩津香ひさの しづか
福島県出身。パリ総合美容専門学校卒業。新卒で都内の大型サロンに就職。一人ひとりとじっくり向き合い、お客さまにキレイを提供する働き方をしたいと考えて、La familia に入社。イッシキ ケンタ氏に師事する。nenenのオープニングメンバーとしてジョインし、現在は店長を務めている。
下岡悠太しもおか ゆうた
広島県出身。15歳から大阪にうつり、美容室で働きながら大阪美容専門学校の高校併学コースで学び、約5年間の美容師生活を送る。その後、イッシキケンタ氏の活動や、作風に惹かれてLa familia に入社。nenenのオープニングメンバーとしてジョインし、主にカラーリングで存在感を発揮している。クリエイティブコンテストのファイナリストにもノミネートする注目のルーキー。
Director桑名 真理子(くわな まりこ)
メイク技術者の目線を武器に、美容WEBマガジンの創刊、12年間で延べ1000件を担当。人の魅力にフォーカスする企画が得意。美容ライフが豊かになる、ワクワクする景色をつくります。
Writer外山 武史(とやま たけし)
SUKETTO LLC代表。インタビューをした美容師さんの人数は延べ1000人以上。いつも美容師さんの味方でありたいと願うライターです!
Photographerトカジ ショウタ
人気美容師として活動する一方で、写真&映像クリエイターとして活躍中。サロンのIV/CM/コーポレートビデオ、芸能事務所のMVなども手掛け、業界から注目される。