美容エディター注目の次世代美容師のパイオニア! ABBEY 木下新×美容エディター/桑名真理子−Find a STAR☆第27回−
bangs特集記事の編集担当にして、1600名以上の人気美容師を取材してきた美容エディターの桑名真理子が、今後の美容業界を担う NextStar美容師を直撃! 美容師としての歩みやこれからの野望、美容業界に対して伝えたいことや改革したいことを伺います。
第27回目は、有名サロンABBEYの副店長を務め、その物腰の柔らかい性格とマッシュショートなどの技術力が定評のABBEY 木下新さんが登場! 木下さんのこれまでの歩みやストロングポイント、これからの展望を伺いました。
SPECIAL CONTENTS
2024.04.12
木下新さんってこんな人!
ABBEY 副店長
木下 新 (きのした あらた)
1996年生まれ。長野県出身。国際文化理容美容専門学校を卒業後、ABBEYへ入社。代表・松永英樹の右腕としてメインアシスタントを経験後、24歳でスタイリストデビュー。マッシュショートを得意とし、ヘアスタイルはもちろんのこと撮影のクリエーションなどにも注目を浴びる。現在は本店の副店長として活躍中。オリジナルアパレル制作など、精力的に活動している。
美容人生を決定づけた、帰り際の“握手”
桑名真理子(以下、桑名):木下さんとは、ABBEY代表の松永英樹さんのメインアシスタント時代に『神の右腕』という企画でお会いしましたね。あのころから落ち着いた佇まいで、コツコツと貪欲に歩まれている直向きさを感じました。確か、学生時代に剣道をされていたんですよね?
木下新(以下、木下):はい。父親が指導者で、保育園から高校3年まで続けていました。そう考えると人生のほとんどは剣道をやってましたね。
桑名:硬派な印象はそのルーツが関係しているんですね! 剣道の経験が美容の道に活きたことって、ありますか?
木下:『続けること』の大切さです。父が指導者ということもあり、やるしかない雰囲気で始めたものの、中学くらいまでは楽しかったですね。
ただ高校まで続けると、対戦相手も同じように鍛錬してきた強者揃い。正直やめたいと思ったこともありました。そこで挫けずに続けたから、勝つための方法や工夫する大切さ、忍耐などが培われたので、本当に続けてきて良かったですね。
仕事も続けていると、スランプだったりときに嫌になることもあるじゃないですか。そんなときも、剣道を続けてきた経験があるから「今は踏ん張りどきだ」と乗り越えられますね。
木下:高校は進学校だったので、文武両道の環境も良かったです。同級生はみんな大手企業など立派に働いていて、何人か僕のところに通ってくれています。みんなとの交流で情報交換ができるのも美容師の仕事に活きてますね。
桑名:素敵な関係性です! 剣道一筋の木下さんが美容師を志したきっかけは?
木下:姉が有名美容室のレセプションをしていて、高校2年生のときにそのサロンへ行ったのがきっかけです。それまで、武道の和を重んじる硬派な環境にいたので、美容業界は全く真逆。とにかく華やかだし、全てがキラキラして見えましたね。
姉は読者モデルをしたり、美容師さんたちは数々の誌面を飾っていたりと、その活躍も眩しくて。こんな世界に入れたら素敵だなと感じたんです。
桑名:お姉さまがきっかけだったんですね! 美容学校に入って、確かそこで代表の松永さんと出会ったんですよね?
木下:はい。2年生になったばかりのころ、通っている学校まで松永が説明会に来てくれまして。温かい人柄や一流を極めてきたオーラに魅了され「明日、サロンに行きます!」と宣言し、次の日に髪を切りに行ったんです。
カット技術や接客にも感動したのですが、僕がABBEYに入りたいと思った決め手は、帰り際の『握手』。初めての経験でとても嬉しく、手から伝わる温もりや偉大さに「ABBEYに入社したい!」と決意しました。
木下:またABBEYにはスタッフTシャツがあるのですが、そのデザインがオシャレだったのも魅力的でした。ダブルタップスやネイバーフットのデザイナーさんとコラボして作っていて、そんな粋のあることをするサロンがあるんだと、衝撃を受けましたね。
桑名:入社されてみて、改めて松永さんの凄さ、リスペクトしているところは?
木下:やること全て頂点へ登り詰めて、常に業界をトップリードしているのに、あんなにも物腰の柔らかいレジェンドを見たことがありません。ABBEYのスタッフはもちろんですが他サロンの一流美容師さんも、松永のことを兄貴としてリスペクトしています。偉大な師匠です。
コロナ禍でデビュー。ピンチから生まれた美容師としての武器
桑名:右腕として師匠から期待されていた木下さん。下積み時代に頑張ったことは?
木下:コミュニケーションです。お店に来た方は、自分のお客さまのつもりで率先してよく話しかけるようにしていて、それは今も大切にしていますね。
あとは、同期の中で最初にデビューをしたいと必死に練習していました。結果的には、3年11ヶ月で同期内で最初にデビューできたのですが、目標としていた時期よりだいぶ遅かったんですよ。
というのも、1年間同じカリキュラムをやってまして…。これが不思議なことに、今の僕のアシスタントもちょうど同じところで半年ほど苦戦しています。
桑名:なんと! 過去の自分を見ているようですよね。どう見届けているんですか?
木下:あまり細かく言わない方針です。どっちかというと寄り添って、「そうだよな」と気持ちを受け止めながら、後輩が練習している側で僕自身も練習する姿を見せています。
桑名:木下さんが負のループから抜け出せた、きっかけは?
木下:どんなに自分が頑張ってると思っていても、その努力だけでは何の評価にもつながらないんですよね。そもそも頑張ってるかどうかは、他人が決めること。何よりスタイルが美しくないと、美容師として評価されないんです。
負のループにハマってるときは「習った通りに切っているのに」という考えになっていて、周りからのアドバイスを素直に受け止めていなかった。その考えを改めて、全ての評価に向き合って努力を重ねた一年後、カリキュラムを合格したときは嬉しくて涙が出ましたね。
桑名:下積み時代に一つの山を乗り越えた木下さん。デビュー後は、いかがでしたか?
木下:コロナ真っ只中でのスタートでした(苦笑)。
桑名:ここでも試練が…! どのようにして軌道に乗りましたか?
木下:当時はお客さまが来店できる状況ではなかったので、どうしようと悩んだ末、元々興味があった撮影に力を入れ始めたんです。
ABBEYではまだ打ち出していないスタイルを武器にしようと木下流『マッシュショート』を考案し、撮影するたびにSNSで投稿していました。半年くらいかけてちょくちょく反響が出てきて、月に20名ほどお客さまが来るように! やった分だけ本当に結果がついてくるんだなと、コツコツやってきた努力が自信につながりました。
最初に反響あったのは、このスタイル。実は3年前のスタイルですが、流行り廃りがなく再投稿するたびに人気になるデザインです。
木下:ABBEYはショートボブが得意のサロンなのでそこをベースに、僕なりにトレンドやお客さまからのニーズを取り入れて仕上げています。もみあげを切り込んですっきりさせてコンパクトに仕上げたマッシュショートが特に人気です。
僕のショートのポイントは、ナチュラルでオシャレすぎないこと。ショートやボブはお客さまからすると挑戦するのに勇気のいるスタイル。「やってみたい」と思ってもらえるよう、エッジの効いたクリエイティブさというよりは、ナチュラルなものを提案しています。また、襟足がキュッとまとまっているスタイルは立体感が出て、人気がありますね。
木下:このマッシュショートレイヤーは、なんとリーチ数100万越え! モデルの小西りりかさんのキュートな表情に合わせて顔まわりに入れたレイヤーがアクセントになっています。
撮影をして作品が増えてくると、他のサロンモデルさんも安心して来てくれるようになり、僕自身も撮影がより楽しくなっていきました。尊敬している周りの美容師さんのいいところも学びながら取り入れて、SNSが伸びましたね。
桑名:数々のサロンモデルさんと撮影をされていますが、愛されるコツは?
木下:不快に思うことはしないように心がけています。例えば苦手な食べ物などを聞いたらスケジュール帳に書いて、飲み物やお菓子の差し入れの内容には気をつけています。
桑名:自分のことを理解してくださってる姿勢に、皆さん安心されるんですね。撮影にもこだわっているとのことですが、どんなカメラを使っていますか?
木下:今年ゲットした『SONY α7 II』。静止画はもちろん動画も撮りたいなと思ってこのカメラを選びました。世間一般的にも今デジカメが流行ってるんですよ。質感や画角など世界観にこだわって撮影すると、不思議とお客さん層もオシャレなか方にシフトしていますね。
木下:僕は売れる美容師さんは大きく3パターンいると思っていて、一般的に人気のスタイルを追求しバズを狙うタイプと、クリエイティブなデザインとセンスで魅了するタイプ、あとは顧客を大事にして、自分のスタイルを貫くタイプ。今、自分が30代になるタイミングで集客のシフトチェンジを考えていて、どのタイプに向かうのか模索している最中です。どの世界も知っておきたくて撮影を始めたところもあります。
一緒に汗をかいて、並走しながら背中を見せる。木下流のリーダーシップとは?
桑名:30歳を目前にキャリアプランも一層膨らんでると思いますが、副店長としてマネージメントで気をつけていらっしゃることは?
木下:共に切磋琢磨することですね。僕はABBEYの中で撮影を頑張っているので、例えばサロンモデルさんへの対応やDMの文章の書き方なんかも、後輩から希望があればレクチャーします。撮影にも連れて行って、現場の空気や動き方を体験してもらうことも。実際についてきて伸びているスタッフが、矢賀部 佳那。数百フォロワーだった彼女も現場を見ながらメキメキ上達し、今では3.8万人の人気スタイリストです。
木下:撮影現場に限らずサロンワークにおいても小さなことが信頼につながります。たとえば飲み物をお出しして、ストローの袋のゴミが出たらすぐに受け取るなど、そういう小さなことに配慮できる美容師になれたら、強いですよね。
僕はスタイリストとアシスタントの二人三脚でお客さまの満足度を高めていく工夫をしています。専属アシスタントの佐藤そらは、急成長中! 彼のデビューが楽しみですね。
思い返すと、剣道をしていたときも僕はものすごい強い選手ではありませんでしたが、キャプテンをしていました。引っ張るリーダーというよりは、並走するスタンス。美容師になってからも、寄り添うことを大切にスタッフの成長を見届けています。
桑名:木下さんは親しみやすく、頼り甲斐のある兄貴なんですね。今後は、どんなことをチャレンジしていきたいですか?
木下:最近は他のサロンで活躍している同期やセンスのある人たちとの交流も増えてきて、同志たちに刺激をもらいながらABBEYで培われた技術をより磨いていきたいです。
撮影に関してもさらに熱は上がっていて、実は朝の4時までTikTokの情報収集をしていました(笑)。オシャレな動画からちょっとダサい動画まで全部知っときたいし全部やってみたい。『木下はなんでも知ってるし、なんでもできる』そんな人になりたいです。
木下:また昨年副店長になりましたが、今までと変わらず、練習もするしみんなと一緒に掃除もする…肩書きに左右されずにどうありたいかを大切にしていけたらなと。今日みたいな取材の日も、誰かに準備を頼むんじゃなくて、一緒に準備をしながら自分も動いて先輩としての姿勢を見せたいですね。
マネージメントをしていると後輩が活躍していく姿を見ることも楽しみの一つ。一人ひとりの長所をどうやったら伸ばせるかを考えて、一緒に汗をかいて背中を見せて、僕も負けないように成長していきます。
そのためにもまずは自分も活躍して有名になることを念頭に、楽しく美容師をしながら結果を出します。あまり欲深いタイプではありませんが好奇心は強いので、これからもやりたいなと思ったらやる、攻めの姿勢を大事にしていきたいです! 出会った人たちに「木下に会ってよかったな」と思ってもらえる、魅力的な美容師でありたいですね。
桑名:己を高めて仲間を大切にする木下さん。これからの活躍がますます楽しみです! 今度は、木下さんの大好きなラーメンの話も聞かせてください(笑)本日はありがとうございました。
木下 新(きのした あらた)
1996年生まれ。長野県出身。国際文化理容美容専門学校を卒業後、ABBEYへ入社。代表・松永英樹の右腕としてメインアシスタントを経験後、24歳でスタイリストデビュー。マッシュショートを得意とし、ヘアスタイルはもちろんのこと撮影のクリエーションなどにも注目を浴びる。現在は本店の副店長として活躍中。オリジナルアパレル制作など、精力的に活動している。
Director桑名 真理子(くわな まりこ)
メイク技術者の目線を武器に、美容WEBマガジンの創刊、12年間で延べ1000件を担当。人の魅力にフォーカスする企画が得意。美容ライフが豊かになる、ワクワクする景色をつくります。
Photographerトカジ ショウタ
人気美容師として活動する一方で、写真&映像クリエイターとして活躍中。サロンのIV/CM/コーポレートビデオ、芸能事務所のMVなども手掛け、業界から注目される。