美容エディター注目の次世代美容師のパイオニア! Violet 若井友紀×美容エディター/桑名真理子−Find a STAR☆第29回−
1600名以上の人気美容師を取材してきた美容エディターの桑名真理子が、今後の美容業界を担う NextStar美容師を直撃! 美容師としての歩みやこれからの野望、美容業界に対して伝えたいことや改革したいことを伺います。
第29回目は、家でも簡単に決まる魔法のカットを武器にノーセットで決まるスタイルが人気のVioletの若井友紀さんが登場! 有名サロンで副店長を務める華麗な経歴を持ちながら、プライベートでは1児のママである若井さん。今回はそんな若井さんのこれまでの歩みやストロングポイント、女性美容師のキャリア形成やこれからの展望を伺いました。
SPECIAL CONTENTS
2024.10.09
若井友紀さんってこんな人!
関西美容専門学校卒業。新卒でHAIR DIMENSIONに入社し、24歳でスタイリストデビュー。代表の前原氏に憧れて、2015年Violetに入社。アシスタントから再スタートし、翌年デビューする。家でも簡単に決まる魔法のカットを武器に、ノーセットできまるスタイルが人気。顔周りの似合わせや髪を柔らかく見せるカット、ライフスタイルに合わせたホームケアの伝授などを得意とする。2021年に出産し2022年に職場復帰。ママ美容師でありながら、現在は副店長として活動中。
国公立の大学を目指す中、どうしてもあきめきれなかった美容師の道
桑名真理子(以下、桑名):若井さんとの出会いは、以前ママ美容師さん向けのセミナーに私が登壇して、そこに若井さんが来てくださったんですよね。
若井さんの第一印象は、可愛らしくてオシャレで若々しいのでまさかママさんだとは! とビックリ。家事・育児と仕事を両立するだけでも大変なのに、産後に副店長へ就任されていて、さらに驚きました。
若井:私もSNSを通して桑名さんの活動をみて、ママでありながら好きな仕事を楽しまれていて、いい刺激をいただいています。
桑名:ママという共通点があるだけで、なんだか勝手に同志のような気分(笑)。
若井さんは、女性美容師さんが憧れる一つのロールモデルのような方だなと思い、オファーさせていただきました。そもそも若井さんはいつごろから美容師になりたかったんですか?
若井:小学5年生に初めて母親が通っている美容室へ行って、そこの美容師さんがとっても素敵でキラキラしていたんです。卒業文集にも「美容師になりたい」と書くほど憧れの職業でした。ただ家庭の事情で中学受験をして私立の中学へ進学し、国公立の大学を目指すことになったんです。
若井:中学3年生になったころ、ふと「そういえば美容師になりたかったんだ!」と思い出して。一番仲良しだった同級生に相談すると「私は芸能界を目指してるから、いつか一緒に仕事をしよう!」と夢を語り合うようになりました。
桑名:お互いの夢を応援しあえるなんて、素敵な関係性ですね。他の周りの方々も賛成してくださったんですか?
若井:先生や親からは専門学校の受験まで、反対されましたね…。家計のことを考えて国公立の大学を狙って勉強もすごく頑張っていたので、先生には何度も個人面談で説得されました。それでもどうしても美容師の夢を諦めきれなかったんです。奨学金を利用して、専門学校へ入りました。
桑名:周囲の反対を押し切って、美容の道へ進まれたんですね。
若井:それだけの覚悟があったからこそ、学校や下積み時代も頑張れました。今では「やりたいことを貫いてよかったね」と、母はすごく応援してくれています。母は私にしか髪を切ってほしくないようで、わざわざ関西から来てくれるんですよ。手に職をつけて、ホッとしていると言ってくれています。
桑名:若井さんの懸命に努力する姿が、周囲の気持ちを変えたんですね。当時は、どんな美容師になりたいと思っていましたか?
若井:ヘアメイクをしたかったので、東京には絶対行こうと決めていました。いろいろとサロン見学したのですが、学校から「卒業生が活躍してるから」とおすすめしてもらったサロンに行ってみたんです。
そのお店は、カリスマ美容師ブームの最前線を走る有名美容室のHAIR DIMENSION。カリキュラムがしっかりしていて撮影などの外部仕事も多く、ヘアメイクをしたい私にはうってつけの環境でした。
案内してくださったスタッフさんも素敵な方で「いろんなところを見た上で決めるといいよ」とアドバイスしてくれくれて。その誠実な対応に「ここで働きたい!」と決意。無事に内定をいただき、4年ほどお世話になりました。
桑名:4年間の下積み期間の中で、今も自分の力になっていることはありますか?
若井:美容師としての基盤は、全て学びました。技術や接客はもちろんですが、礼儀やマナー、精神面なども磨いてもらいましたね。全体的に男性スタイリストの割合が多く、みなさん第一線で活躍されている方ばかりでしたので、ビシバシと鍛えていただきました。
桑名:若井さん、可愛らしいビジュアルに反してとってもガッツがありますね。
若井:中高が進学校だったので、勉強を通して根性はついたかもしれないです。毎日テストがあったので、通学時間も含めてひたすら勉強しないといけなくて。本当にきつかったのでそのころに比べれば、今は好きなことを追求できるんだからと、自分を励ましていました。
アシスタントに戻ってでも入りたかった、憧れのViolet
桑名:Violetさんへ入ることになったきっかけは?
若井:4年目にデビューしてしばらくして、会社の経営が危うくなりまして…。 Violetへの参画が決まっていた先輩の浅沼が、代表の前原に私の話をしてくださったんです。
以前から前原の作品が大好きで、ヘアカタを見ながらスタイルを作る勉強会でも、不思議と前原が手がけるデザインを選んでいたんです。憧れの人のサロンで働きたいと思い、面接を受けました。
「アシスタントからでもいいので、入らせてください!」とアピールしたのが功を奏したのか、入社することができました。「せっかくなら僕についてみるのもいい勉強になるのでは」と、2015年の入社と同時にアシスタントからの再スタートしたんです。
桑名:アシスタントから再スタート! やはり根性がありますね。
若井:ガッツだけはありますね(笑)。すでにいるお客さまは引き続きやらせていただきつつアシスタント業務をし、1からカリキュラムも取り組みました。
最初の半年は浅沼につき、その後デビューまでは前原について、2016年に再デビューしました。
桑名:若井さんのお客さまはどんな方がいらっしゃいますか?
若井:20〜40代を中心に、お客さまのお子さんや親御さんを紹介していただくこともあるので幅広い年齢層の方を担当しています。会社員の方が多いですが、ダンサーさんや芸能関係の方などアーチスティックなお客さまもいらっしゃいますね。
桑名:美容師として確固たる武器はなんですか?
若井:扱いやすさが格段に変わる魔法のカットがウリです。ノーセットで決まる再現性の高いヘアスタイルにこだわっていますね。実は私の髪質が硬くて頭の形も特殊なので、これまで美容室に行って仕上りに満足したことがなかったんです。自分のコンプレックスと同じような悩みを持つ方にも理想のヘアを提案できるよう、とにかく練習しましたね。
一人ひとりの魅力を引き立てることを大切にし、女性らしさや柔らかさをどこかに盛り込むことにこだわっています。このヘアは最近のイチオシです。
若井:ハンサムな印象の中に髪の毛の柔らかい動きやメイクで甘さを加えています。メイクはベース作りからこだわって、作品の雰囲気に合わせて似合わせています。また、社内コンテストで作ったこのデザインも好評です。
若井:ホワイトメッシュをポイントで施し、デザイン性と可愛らしさを演出。カラーが生きるようにトップや毛先に動きを出してスタイリングしています。
桑名:若井さんのヘアスタイルは、女性心に響く素敵なヘアばかりですね。
若井:ありがとうございます。実はノーセットで決まるカットは、メンズの方にも需要があるんですよ。ガチガチに決めるヘアがメンズの支流ですが、ナチュラル思考のお客さまがきてくださっています。Violetでメンズカットをするのは私くらいですね。全体の2割ほど男性のお客さまがいらっしゃいます。
桑名:再現性の高いヘアにこだわっているようですが、ナチュラルに仕上がるおすすめのスタイリング剤などはありますか?
若井:『ミインカール アイロンキープ プライマー』は、ヘアアイロンを使う前に使うと程よいツヤと軽やかな質感が出るのでお気に入りです。
若井:このドライシャンプーもよく使います。『オラプレックス No.4D ドライシャンプー』を前髪につけると、汗や皮脂でベタっとならずにサラサラな状態をキープできる優れ物!
私もママになってから気軽に美容サロンにいけなくなったので、ホームケアの大切さが身に染みています。復帰後はよりプロダクトを試してお客さまのライフスタイルにマッチする商品をお伝えするようになりましたね。すると、全社員の中で1位の売上になり、表彰もされました。
桑名:ホームケアの重要性は、ママになるとより実感しますよね。日々お忙しく動いていらっしゃると思いますが、パフォーマンスを維持するために気をつけていることは?
若井:食事にはこだわっていますね。妹が料理関係の仕事をしていて「人間の体は水と食べたものでできてるから、何を摂取するかで体のコンディションが変わるよ」と言っていたので、より意識しています。今ハマっているのが、麹の調味料づくり。発酵食品を取り入れると、便通も良くなり調子がいいですね。またグルテンフリーを試してみたり、無添加の調味料を揃えるなど、できる範囲でやっています。
大好きな家族のためにも、自分が笑顔になれる選択を大切にしたい
桑名:結婚や出産を視野にキャリア形成を考えることはありましたか?
若井:子供ができるまでに美容師として支持されるようになろうと考えていました。ステイタスを確立するために必要な売上やリピート率など目標を設定し、取り組んでましたね。それをちょうど達成したころに産休に入りました。2021年3月に出産してからは、生活が一変しましたね。
桑名:産休はどのくらいとったんですか?
若井:1年3ヶ月です。産む前は早く復帰したいと思っていたんですが、子どもの成長を考慮したり保育園探しなどをしていたら、あっという間に過ぎました。休んでいる間は、他の美容師さんの動きをSNSで見てうずうずしたこともありました。ときどき母親の髪を切ったり、芸能関係の方をおんぶしながら施術できたのは嬉しかったですね。
桑名:復帰してから現在は、どのように働かれていますか?
若井:11時くらいに出勤して、保育園のお迎えに間に合う17時まで働いています。月に2回ほど夫が休みの日は19時までいますね。お休みは日曜日と定休の火曜日です。
復帰してみるとあらためて美容師の仕事やお客さまが大好きだと再確認しました。
桑名:仕事と育児を両立するためのコツはありますか?
若井:復帰するときに前原から「選択を強いられたときに、仕事と家庭のどちらを選ぶのか優先順位を決めておくといいよ」とアドバイスをいただいたことがあったんです。
どうしてもどちらかを選ばないといけない究極のときは、家庭を選ぶことにしています。あとは、自分が笑顔でいられる選択を重要視していますね。やっぱりママが笑っていると、家庭もパッと明るくなりますし、その軸を大切にしています。
桑名:とっても勉強になります。ママになって働く上でプラスになっていることはありますか?
若井:人への接し方が変わったように思います。物事を柔軟に受け止められるようになったり、周囲に寛容でいられるようになったのも、子育てからの学びが大きいですね。あとは、どんなに大変でも子供の顔を見ると、疲れが吹っ飛んでもっと頑張るぞとエネルギーが湧いてきます。子育ての経験は、仕事にめちゃくちゃプラスになってますね。
桑名:人への接し方が変わることでスタッフ教育にも活きてきそうですね。そういった周囲に寄り添う姿勢から、副店長に抜擢されたのでしょうか?
若井:副店長になれるとは全く予想もしていなかったのでビックリしました。毎年5月に経営企画発表会があるのですが、その前日に「副店長になるから一言考えといて」と。嬉しいサプライズでしたが、同時に毎日が一杯いっぱいで私に務まるのか不安もありました。
以前から代表には、スタッフ教育で気になることがあったら教えてと言ってもらってたんですが、そろそろ直接指導してみようとなり、礼儀など美容師としての基礎を見ていくことになりました。
桑名:指導するときに気をつけていることはありますか?
若井:伝えるときのシチュエーションは気をつけていますね。褒めたりプラスになることはみんなの前で伝えますが、注意をするときは個別に呼んで先にスタッフの意見を聞くようにしています。一方的に怒ったり決めつけるのは理不尽なので、そうしていますね。
桑名:着々とキャリアを形成している若井さん。今後、チャレンジしてみたいことは?
若井:以前から海外に関わることをしたくて最近は海外のお客さまも多いので、英語力を身につけたいですね。産休中に独学で勉強するほど英語はもともと好きです。今は、翻訳機がなくても聞き取りができるようになりました。子どもも英語を始めて、一緒に楽しみながら頑張っていますね。
桑名:ママでありながらコツコツとキャリアアップされている若井さん、カッコいいです!最後に、ママ美容師さんへメッセージをお願いします!
若井:仕事と家庭の間で日々いろいろな葛藤があると思います。でもママが楽んでいないと家庭にも歪みが生じますから、ぜひ笑顔で過ごせる選択をしてほしいですね。
今はやりたいことの全部はできないかもしれませんが、諦める必要もありません。やりたいことを持ち続けていたら、チャンスやタイミングがきっときますよ!
桑名:心温まる若井さんのメッセージに働くママとして私自身とっても励みになりました! これからのご活躍をますます楽しみにしています!
若井友紀
関西美容専門学校卒業。新卒でHAIR DIMENSIONに入社し、24歳でスタイリストデビュー。代表の前原氏に憧れて、2015年Violetに入社。アシスタントから再スタートし、翌年デビューする。家でも簡単に決まる魔法のカットを武器に、ノーセットできまるスタイルが人気。顔周りの似合わせや髪を柔らかく見せるカット、ライフスタイルに合わせたホームケアの伝授などを得意とする。2021年に出産し2022年に職場復帰。ママ美容師でありながら、現在は副店長として活動中。
Director桑名 真理子(くわな まりこ)
メイク技術者の目線を武器に、美容WEBマガジンの創刊、12年間で延べ1000件を担当。人の魅力にフォーカスする企画が得意。美容ライフが豊かになる、ワクワクする景色をつくります。
Photographerトカジ ショウタ
人気美容師として活動する一方で、写真&映像クリエイターとして活躍中。サロンのIV/CM/コーポレートビデオ、芸能事務所のMVなども手掛け、業界から注目される。