だれかにとって、必要とされる場所になりたい。新生サロン『Behöv』の魅力と、倉田聡子の美容師ストーリーに迫る! 

ベリーショートやビビットなハイトーンカラーなど、そのオリジナリティあるヘアデザインで業界内外から注目を集める美容師、倉田聡子さん。そんな倉田さんが2025年5月、原宿・明治神宮前に『Behöv(べホブ)』をオープン! 1歳のお子さんを育てながら美容師として新たなスタートを切った倉田さん。美容師として大切にしているポリシーやサロンの強み、今後の展望などをお伺いしました。ぜひ最後までご覧ください!

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2025.07.15

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目 次

倉田さんってこんな人!

Behöv 代表

倉田聡子(くらた さとこ)

東京都出身。国際文化理容美容専門学校卒業。都内のサロンに勤務したのち27歳で「THE REMMY」に入社。ベリーショートやハイトーンカラーを得意とし、幅広い層から支持を集めている。ヘアデザインのクリエーション力が高く、コンテストやヘアショー、撮影など活動は多岐にわたる。2025年5月、原宿・神宮前に「Behöv(ベホブ)」をオープン。育児と仕事を両立しながら、美容業界の第一線で活躍する女性美容師。

妊娠を機にライフステージを見据えて、次のフィールドを意識するように

ー 2025年5月に『Behöv』をオープンした倉田さん。いつごろからお店を構えようと考えていましたか?

もともと出店や独立は考えていなかったんですよ。前サロンのTHE REMMY(ザ レミー)では、サロンワークに限らずコンテストや撮影・セミナーなどいろいろと挑戦させていただき、充実した毎日でした。美容師としての基盤をしっかり育てていただき、一流のサロンだからこそ経験できた10年間は私の財産です。代表でありご夫婦の上田竜二さん・イセキリエさんから愛情を持ってご指導いただきました。

転機となったのは、サロンが表参道から代々木八幡に移転が決まったタイミングで、私の妊娠が判明したこと。今後どのような働き方がベストなのかを考えるようになり、オーナーたちと話し合うことになったんです。

上田さん、イセキさんからは私の状況を踏まえた上で「聡子の旦那さんも美容室を経営してるし、一緒にやるのもいいんじゃない?」という提案もいただきました。夫婦で子育てをしながらサロンも経営されているお二人からの温かいお言葉は、胸に響きましたね。

30代中盤に差しかかり40代を見据えて次のステージを意識するようにもなっていました。結婚・出産をしても仕事をセーブしたいとは一切思わないし、むしろ気持ち的にはガンガンやっていきたい。ただ、どうしてもお迎えの夕方までに終わらないといけなかったり、日曜は休みにするなど制約はあります。ライフステージの変化に合わせて、全力で仕事に向き合いながらプライベートとのバランスが取りやすい環境が良いと考え、新しい働き方をしようと決意しました。

ー 原宿・神宮前エリアに決めた経緯は?

新しい働き方を模索しているころ、行きつけのカフェ『HORAIYA』に立ち寄ったのがきっかけです。前サロン時代から毎朝のように通いつめていた大好きなカフェ。出勤前に朝ごはんとコーヒーをいただいて贅沢な時間を過ごすのがルーティン。育休中も、散歩がてらよく訪れていたんです。通いつめていくうちにお店の方とも話す機会が増えて、近くの物件が空くことを知りました。

そこは17年間も地元で愛される飲食店だったようです。表参道・明治神宮エリアで一階の路面店はなかなか空かないので、夫に相談して一緒に見にいくことになりました。それが去年の12月ごろだったでしょうか。

物件のある神宮前2丁目は明治神宮・原宿・表参道といった駅に隣接しており、最先端のトレンドと閑静な住宅街の落ち着いた雰囲気が融合したエリア。独特な心地よさがあり、私も衣装を探しにショッピングしたり、散歩やグルメも満喫していたんですよ。美容師になってから馴染みのある大好きなエリアなので、ここで働けたらいいなと決め手になりました。

ー スタッフさんはどのようにして集まりましたか?

リクルートはSNSから募集をかけ、面接をして決めました。面接といっても「話をしましょう」という感じで、応募者の自然体な印象を見ていましたね。サロンの空間にマッチするか、また同じ感度で働ける方がいいと思っていました。なので、現状の顧客数や売り上げというよりは、美容師としてどんなことを大切にしているのか、どうなっていきたいのかをヒアリングしましたね。

実際に採用したつばさは、3年ほど美容師をした後ヘアメイクさんとして活動していました。美容学生のころから私のインスタをフォローしてくれてたようで 、もう一度美容室で働こうと思っていたタイミングでちょうど募集を見たようです。

私は下積み時代に先輩方から厳しくも愛情を持ってしっかり育てていただいたので、そのおかげでどんなお客さまも対応ができます。Behövのスタッフにも、どこへ行っても活躍できる一流の美容師になってもらえるよう見守っていきたいですね。

だれかにとって、なくてはならない人や場所でありたい

ー サロン名はどのようにして決めましたか?

文字の音や並びがいい言葉を探していて、惹かれたのは北欧の言葉。北欧系のアパレルや家具ブランドは、日本人に愛されて馴染みのあるお店が多いなと感じています。IKEAやフライングタイガーなどがそうですね。いくつかあった候補の中から、北欧出身の知り合いに相談したり、最近マイブームのチャットGPTなども活用し、スエーデン語の『Behöv』を選びました。

Behövは「必要」「求められる」という意味。誰かにとって、なくてはならない“人”や“場所”でありたい。そんな想いを込めています。

日本人には馴染みのない文字並びのようでお客さまからは「なんて読むの?」という反応が多いです(笑)。お店の名前はもちろん大切ですが、今はサロンにいるスタイリストの魅力がお客さまを引き寄せる時代。Behövのスタッフに魅力を感じて来てくれたらいいですね。

ー 独自性のあるサロンデザインで一際おしゃれですね。内観のこだわりポイントは?

色味や質感など特にこだわっていて、タイルや石、床の印象など一つひとつ手にとって丁寧に選んでいきました。セット面の鏡はあえて統一せずに角丸と四角を採用したり、北欧ベースな印象の中にアフリカのキャッシュトレーなど、さまざまなカルチャーやデザインを織り交ぜています。

私が特にお気に入りなのは『カラーブース』。当初はバックルームにする予定だったんですが、壁をつくらずオープン空間にしています。というのも接客中はいつも途切れないほど会話が弾んで、カラー剤を作りに行くために一旦中断するのが惜しまれる感じでしたが、この空間ならずっと会話を楽しめます。

また一階の路面店ということもあり、外観のデザインを見て「なんのお店だろう?」と近所の方が興味を持ってくれるのも嬉しいですね。

ー 洗練さと大胆さを織り交ぜたクリエイティブで、同業者からも注目を集める倉田さん。Behövで打ち出すヘアデザインは、どのようなことを意識していますか?

Behövが大切にしたいのは、一人ひとりのお客さまに丁寧に向き合う接客と唯一無二のデザイン提案。“その人らしさを大切にするデザイン”を、Behövのサロンビジュアルでも届けています。

今シーズンのサロンビジュアルでは、モデルさんの雰囲気に合わせてマニッシュに仕上げています。ニコニコと満開に笑う感じではなく、アンニュイな表情がとっても似合うモデルさんの雰囲気を最大限活かしました。

写真上のモデルさんはマッシュウルフをベースに、ハイトーンカラーのオレンジでおしゃれ感をプラス。写真下のモデルさんはショートウルフカットにパーマをかけて、顔まわりや襟足など毛先の動きにこだわっています。

今後もシーズンごとに撮影をやろうと思っているので、Behövから表現豊かなデザインを発表していきたいですね。

人生の選択肢が無数にある中で、選んできた道を正解にする

ー 倉田さんは現在、どのような働き方をされていますか?

9時スタート18時終わりで、実はこれまでと業務時間はほぼ変わりません。働く時間をできる限り確保できるように、保育園もサロンの近くで探しました。働くママへの理解が深い保育士さんばかりで、本当にありがたい限りです。

私だけではなく、つばさもも9時から17時30までなんですよ。営業が終わった後は、練習してもいいし、帰ってもいいし、そこは自由。その代わり営業時間はちゃんとやろうねと、オン・オフを切り替えてメリハリのある働き方を提案しています。働くママ以外でも例えばウェディングやヘアメイクがやりたい美容師さんもいるでしょうし、一人ひとりに寄り添った働き方が応援できるサロンになれたらいいですね。

ー 美容師として第一線で活躍されている倉田さん。キャリアとライフステージを天秤にかけて悩むことはありませんでしたか?

子供を産む前は、育児をしながら働くとなるとキャリア形成が一時的にスローペースになる印象がありました。当事者になってみるとやはり出産後は生活のペースがうまく掴めず…大好きな仕事を思う存分挑めない自分に悔しくなることも…。これまで一生懸命やってきたように今も熱量高くバリバリやりたい一方で、「ママだもんね」という目を向けられることも多少あり、少し複雑な心境になったこともあります。

仕事と子育ては全く違うフィールドですし、自分の理想とする働き方を叶えていくために、夫やスタッフと協力しながら工夫しています。夫婦でもあり仕事仲間でもある夫と連携をとれるのはありがたい限りですね。状況を理解して入社したスタッフにも感謝しています。

ー 育児をされながらのサロン運営は、いかがですか?

やはり子どもを育てていると思い通りにいかないこともありますが、経営に関するノウハウを知る夫が身近にいるのが心強いですね。

子どもをきっかけに新たな出会いも増えました。息子の日々のファッションを「#ウノスケファッション」とSNS投稿していたところ、「お子さんの投稿から聡子さんが美容師だと知って!」と予約してくださった方がいたんですよ。

息子と共に過ごしていると発見や学びがあって、子どもを育てている感覚よりは一緒に生きている運命共同体のような感覚です。

ー 倉田さんにインタビューをしていると、エネルギーでストイックな印象を受けます。スローペースどころか、さらにパワーアップしているのでは?

『Behöv』という場所があるから、そうなったのかも知れませんね。お店を軌道にのらせるために汗水流して働いて、公私共に良好な関係でいられるようにパートナーと協力する、サロンを任せてもらっていることで日々突き動かされています。

結婚して子供が産まれ、お店を開くということは、順風満帆に映るかもしれません。ただ私はそういう実感がなくて、いろんなことを切り捨てて大切なものを残してきたような感覚なんです。今は週6回サロンに出ていますし、日曜日や祝日は子育て。育児とサロンの立ち上げを同時に走らせてく中で、ハプニングも多いです。

ただ結局は、そんな大変なことも楽しんじゃってますね。私は育児と仕事どちらも全力でやるスタンスですが、今は結婚や出産が王道な時代ではないですし、私も正解と捉えていません。無数の人生の選択肢がある中で、選んできた道を正解にするしかないですよね。そういう意味でも、とにかく全力で働くしかないし、自分のサロンでいろいろと試してやっていくつもりです。

ー 今後の展望をお聞かせください。

Behövがオープンしてから2ヶ月が経ち、営業も落ち着いてきたので、次の展開を準備しています。今後、私がいいな思ったものをPOPUPなどで紹介できたらいいなと。

7月は耳つぼジュエリーのデザイナーさんが出展予定です。美容室でヘアと耳ツボジュエリーが同時並行できたら効率的ですし、顔のリフトアップなども期待できるので美容の観点で見ても相乗効果が期待できます。また、サロンで扱うプロダクトも、ヘア商品に限らず展開しています。

このメイクアップペンは、アイライン・アイブロウ・リップラインなど万能に使えるアイテム。店舗で販売もしていますし、メイクのお直しで使えるようにセット面に設置。出窓やカウンターが広いので、いずれは、好きな器の展示会ができたらいいなと夢が膨らむばかりです。

スタッフの育成にも力を入れていきます。私は師匠から「僕たちを踏み台にするくらいの気持ちで、活動しなさい」と背中を押していただいてました。次は私がBehövに関わるスタッフたちを、自分の選んだフィールドで活躍できるようにしていきたいですね。

17年間も地元の人に愛された飲食店の次に生まれたBehövが「このお店もいいね」と思ってもらえる場所になったら本望です。実はBehövができたころ、地元の方から愛されている近くの老舗美容室がご病気のためクローズされたようです。そのお店に通っていた50〜60代のお客さまがお店に来てくださって、担当できるのが嬉しいですね。

私は、地域密着店のような良さを感じるこのエリアが大好きです。道を歩けば、何人もお客さまや知り合いとすれ違い、挨拶を交わします。近所に住む人たちと関係性が作れるっていいなと思います。温度感のある街のコミュニティーを大切にしながら、長年通ってくださる愛されるサロンになっていきたいですね。

PROFILE
プロフィール
倉田聡子
Behöv 代表

倉田聡子(くらた さとこ)

東京都出身。国際文化理容美容専門学校卒業。都内のサロンに勤務したのち27歳で「THE REMMY」に入社。ベリーショートやハイトーンカラーを得意とし、幅広い層から支持を集めている。ヘアデザインのクリエーション力が高く、コンテストやヘアショー、撮影など活動は多岐にわたる。2025年5月、原宿・神宮前に「Behöv(ベホブ)」をオープン。育児と仕事を両立しながら、美容業界の第一線で活躍する女性美容師。

EDIT
編集
桑名 真理子

Director桑名 真理子(くわな まりこ)

メイク技術者の目線を武器に、美容WEBマガジンの創刊、12年間で延べ1000件を担当。人の魅力にフォーカスする企画が得意。美容ライフが豊かになる、ワクワクする景色をつくります。

菊池 麻美

Photographer菊池 麻美(きくち あさみ)

多摩美術大学グラフィックデザイン科卒、2003年・2004年 CANON写真新世紀佳作。レゲエと海外旅行をこよなく愛するフリーランスフォトグラファー・シネマトグラファー。