才能はいらない。不器用さは現状を変える最大の武器! 変化を恐れず突き進むハイクオリティ美容師、村田勝利の美容師ストーリーに迫る!
『似合わせショート』のスペシャリストで一目置かれる実力派美容師、nex/村田勝利さん。村田さんが所属するnexグループでは多彩なジャンルで特化する一流美容師が多く在籍。サロンメンバーで美容師向けオンラインサロンを運営し、村田さんは校長を務めています。活躍が多岐に渡る村田さんの大切にしているポリシーやサロンの強み、今後の展望などをお伺いしました!
SPECIAL CONTENTS
2026.03.29
村田勝利さんってこんな人
nex the salon coall 表参道/ディレクター
村田 勝利(むらた しょうり)
大阪府出身。高津理容美容専門学校卒業後に都内有名サロンを経て、nexに参画。骨格、髪質に合わせて扱いやすく似合うショートに定評があり、年間5000名のお客さまを担当。Instagramのフォロワー数は12万強(2026年3月現在)。独自の似合わせ理論を確立し著書『似合わせショート完全マニュアル』を出版。全国でのセミナーを行うほか、美容業界最大規模オンラインサロン『nex ACADEMY』 校長を務め、教育にも注力している。
現状に満足しない思いが、さらなる高みを目指す原動力になる
ー 似合わせショートが定評で年間5000名近くのお客さまを担当するなど、業界内外から注目されている村田さん。学生時代はどんな少年でしたか?
今の僕からは想像できないと周りから言われますが、10代は本当にやる気がなくて少し冷めたところがありました。
家が貧しくてやりたいことを簡単にできる環境ではなかったというのもあります。小さいころ野球をやりたいと思ったことがあったけど、道具を揃えるなどお金がかかりますよね。オシャレに興味もあったけど、誰から譲り受けたのかわからないお古を着る生活でした。
すぐには変えられない現実を受け止めてからは、何事も6割でその日をただ楽しもうという日々。夢はなかったけど「貧乏から脱出したい、稼げる人間になりたい」とは強く思っていましたね。
ー 村田さんが美容師になろうと思ったきっかけは?
地元のサロンに通いはじめてから、髪型や服装が自由に楽しめる美容師って楽しそうだなと思ってて。高校3年生の夏、本格的に進路を考えるようになり候補に上がったのが「農業」と「美容師」。調べてみると北海道に農業の専門学校が一校あったのですが、学費を自分で払う手前ちょっと費用面や距離的に厳しいなと。美容師はオーナーで年収1500万を稼いでいる方のインタビューがあったりして、「もしかして稼げるかも!」って思ったんです。
ただ僕はすごく不器用で自分に自信があるタイプではありません。全国展開をするバリバリの美容室経営者というよりは、10年くらいスタイリストをして地元で個人店を開けるかな…くらいのイメージでした。
ー 勝利さんのやる気に火がついたのは、いつごろですか?
漠然と過ごす日々は気楽だったんですが、稼ぐことはできないじゃないですか。美容師になろうと決めた当時にうなぎのぼりで頭角を表した堀江貴文さんや与沢翼さんなど若手経営者の本を読んで「このままじゃヤバいかも」…と危機感を覚えたんですよ。1秒でも早く動き始ようと目が覚めました。
ー 意を決して美容の道へ飛び込んだ村田さん。美容学生時代はいかがでしたか?
めっちゃ厳しい学校でしたね。これまでテキトーに生きていた僕は、筆記用具を持っていく習慣がなくて(笑)。入学早々に隣の人に借りたら、廊下で立って授業を受けることになりました。担任からは「いつでも辞めていいから」とキッパリ言われて、自分で学費を出してるのにこんなことで辞めたらダサいなと。
気持ちを入れ替えてからは、夏休みは1日も休まず練習に励んでましたね。朝5時起きでコンテストに向けて朝練して、授業受けて帰宅したら夜中の2時まで練習。あのころは三時間睡眠で練習に没頭していましたね。「頑張るって意外と楽しいな」と思い始めたのもそのころです。
ー 努力を積み上げて参加したコンテストはいかがでしたか?
それが、全く結果が出なかったんですよ。「俺の作品のがいいじゃん!」と当時は納得いかない部分もありましたが、そういった不満やジェラシーは、自分を奮い立たせる一番の燃料になりましたね。
美容師になってからがむしゃらに頑張ることができたのも「悔しさ」から。スタイリストになるまで年末年始以外は休んだことがないです。
最速スタイリストデビューを目標に掲げて頑張っていましたが、結局それも2ヶ月ほど記録を破ることができなかったんですよ。自分の人生を捧げてきたコンテストやデビューが立て続けにうまくいかず、胸を張れるタイトル掴めませんでした。リアルに「才能ないな」って感じましたね。
ー 「才能がない」という思いは、現在進行形ですか?
ですね。才能がないことを自覚しているので、その自分を前提に「とことん調べよう」とか「量でカバーしよう」など行動を工夫しています。
nexには現在スタッフが約80名ほど在籍してるのですが、僕より才能溢れる人ばかりですよ。物覚えがよかったり美容の筋がいい人、人柄や接客が上手い人、またその両方を兼ね備えてバランスがいい人など、みんな多彩です。ただ「才能があるのに、なんでもっとやらないの?」と思うことはあります。
僕に似たスタッフが一人いるんですが、20歳で上京してから血の滲むような努力をして、今はマンツーマンで360万ほど売り上げています。才能がないことを自覚して挫折をした経験をバネにして、彼は手を抜くという概念がありません。僕自身も、泥でもなんでもすすってやる勢いで今もやっています。
一人のやる気が着火剤になり、周囲へ熱意が飛び火していく
ー 新卒で有名サロンに入社してからはいかがでしたか?
スタイリストになってからの1年半が地獄で、初月の売り上げはたったの8万…! 集客の仕方がわからず「とりあえず飲みにいってみたら」とアドバイスをもらっても手持ちのお金がなく、500円を握りしめてHUBでひたすら話しかけたりしてましたね。終電まで街でハントしたりブログを毎日更新したりして、やっと50万を達成しました。
ー 地獄から抜け出し、売上に繋がった一番の勝因は?
プライドを捨てて周りに聞いたのがよかったですね。友人であるsandのへぎしょうたに「インスタの作品がダサい」とはっきり言われたんですよ。自己満だったようで改善点を教えてもらいました。また客ハンだけで当時200万を売上げていた同級生の陰山天輝から実践的なノウハウを学ばせてもらいましたね。
ー 紆余曲折ありながら充実したスタイリスト時代を過ごしていた村田さん。ネクストステージを考えた経緯は?
徐々に売り上げが伸びてポジションも最高位になったころ、ふと次にやりたいことはなんだろうと立ち止まったんです。
人生一度きり、新しい挑戦をしたくて「1からサロンを大きくしてみたい」なと。セミナーで他のサロンの美容師さんから悪条件で働いている話を聞くことがあり「こんな美容室があったらいいな」を叶えられる側になろうと決心。お店づくりを経験できるサロンに転職しようと考え、2020年1月nexへ加入したんです。
ー nexはどんな魅力を感じて加入されましたか?
主に3つ理由があります。まず一つ目は魅力的な労働環境だったこと。こんなサロンがあったらいいなという条件が、見事に揃っていたんですよ。2つ目はサロンの規模が成長過程だったこと。サロンを大きくしていく経験ができると思ったんですね。いかようにも何色にもできるなって。3つ目は代表の寺田と話したときに、様子がおかしかったことです(笑)。
ー 様子が! どういった意味で?
寺田は美容業界の常識にとらわれない経営眼があり良い刺激があって。転職は人生を変えることなので不安はもちろんありましたが、結局は自分次第だし飛び込んだ先を正解にすればいい。これまでの美容室経営とは一味違う会社に行ったほうが楽しそうと思ったのがnexに入社した決め手です。
入社初日、代表に「仕組みはお任せします。風土は僕が作ります」と伝えたんですよ。魅力ある環境に対して風土がボコボコだったので。裏でスマホをいじっていたり、勉強会の参加率も低かったり。このお店の雰囲気を変えられたら、この先なんでも変えられる! と意気込んで取り組みました。
ー どのようにしてスタッフさんに歩み寄りましたか?
営業をゲームのように面白くして、楽しく続けられるようにしたんですよ。カラーを何分で塗布できるかなどを競ってみたりして、あくまで楽しみながら仕事してもらおうと。
一人ひとり向き合えるように勉強会なども時間を割いていましたね。人ってできないことがあると恥ずかしいじゃないですか。だから課題を乗り越えるたびに褒めて伸ばしました。やる気の火種を一人作り、そこから周りを巻き込んでいって、3ヶ月くらいで風土が変わっていったように思います。すると、入社希望者も熱い人が増えて、1年も経てば理想の状態になっていったんですよ。
変化を恐れず、いま感じていることに素直に柔軟に進んでいく
ー 「似合わせカット」が定評の村田さん。似合わせるために何を意識していますか?
『補正』と『個性』を活かす、その両軸を大事にしています。似合わせはお客さまの個性を活かしていくのが主流ですが、そうするとスタイルが限られることもあるんです。
たとえば大人顔の方は洗練された落ち着いたヘアが似合いますが、日によってフェミニンに可愛くなりたいときもあるはず。補正をすることで叶えられる雰囲気がグッと広がります。最終的なスタイルの希望はお客さまが選びますが、選択肢の幅を広げて提示してあげられるかは美容師の力量です。
ー どういったお客さまがいらっしゃいますか?
10〜60代と幅広く担当していてメイン層は20〜40代。特にママさんが多くいらっしゃいますね。実は「似合わせ」に力を入れようと思ったのもママさんがきっかけなんです。
その方はお子さんが幼稚園に入学して時間に少し余裕ができたとき、ふと鏡に映る自分がダサいと落胆したそうで…。子育てに奮闘している中で流行りがわからなくなり体型も変わり、今の自分に何が合うのかわからなくなってしまったんですね。
そんなときに僕がカットしたヘアを周りに褒めてもらったことを思い出してくれたんです。来店されたとき、本当の意味で全幅の信頼を置いてお任せしていただける美容師になれたのかなと。稲妻が走ったような感動がありました。
ー nexが誇るサロンの強みは?
それぞれの分野で特化しているスペシャリストが在籍していることでしょうか。僕たちは『nex ACADEMY』というオンラインサロンを運営しているんですよ。週一回リリースし、約1900名が利用してくれています。コロナ禍から始めて6年。今もオンラインサロンを続けられているのは、企画や広告担当などメンバー内で役割を持たせてチームでやっているからですね。
ときどきセミナーをすると「激戦区サロンの美容師はすごくて、地方は違う」という雰囲気を感じることがあります。僕自身はそう思っていませんし、そういった誤解は偏った情報からくると思うんですよ。情報格差をなくしたいと手をつけたのがオンラインサロンでした。
nexにはそれぞれに特化した美容師がいるので、最先端の最高峰な授業をお届けできるなと。技術もそうですが、SNSの効果的なやり方や自分を売り出す方法、リピートのあげ方などオールジャンル網羅して発信しているのが特徴です。
ー 才能がないと言い切る主催者の村田さんがいるから、より説得力もあるんでしょうね。
美容師に才能はいらないってマジで思ってます。僕が特に意識していることは「これをやったら売れません」を伝えること。ボーリングで例えるなら「ガーターをなくす」ことを徹底するんです。
美容師として絶対的なNGを伝えた上で、まずは勇気を出してボールを放って1ピン倒れるまで投げ続ける。才能がなくてもボールを放り続けたらいつか10ピン倒れるよってスタンスです。
ー 村田さんご自身の美容師としての武器は?
「変化を恐れない」ことでしょうか。昨日までの考えが次の日違うのは自然な流れ。外的要因でみんな意識が変化しているはずなのに言うことがコロコロ変わるのはカッコ悪いという印象があるかもしれない。けどそんなプライドは持たなくていい。良い影響を受けたら、スパッと切り替えて一旦素直にやってみる。柔軟性を持って成長していたいですね。
ー 村田さんが今後、力を入れていきたいことは?
出店の責任者として5年計画で全国を開拓していきます。雇用条件や教育など働く側の環境も整い、また技術・接客など美容室としてハイクオリティーな水準でお客さまに提供しています。そういった中でnexで働きたいけど家庭の事情で地方から移動できないなどの声を聞き、だったら僕たちが出店しようってことになったんですね。
nexは心身が豊かな状態でお客さまと真摯に向き合い長く働ける環境を用意しています。美容業界の働き方の課題と正面から戦っていく美容室でありたいです。
ー 稼ぎたいとガムシャラだった村田さんが、今度は応援する側になるんですね。
人生無駄な経験はないですね。人に喜ばれることがやりがいですからスタッフもお客さまも幸せでいてほしい。けど、そのためには自分も経済面・健康面で豊かで自立した状態でいる必要があります。
ここ近年は生成AIの発展など社会がめまぐるしく変化する中で今まで通りの美容師としての働き方、経営のあり方では潰れる可能性があります。その危機感をやる気に変えてチャンスだと思ったら全部やりたいし、常に挑戦者でありたいですね。
村田勝利
大阪府出身。高津理容美容専門学校卒業後に都内有名サロンを経て、nexに参画。骨格、髪質に合わせて扱いやすく似合うショートに定評があり、年間5000名のお客さまを担当。Instagramのフォロワー数は12万強(2026年3月現在)。独自の似合わせ理論を確立し著書『似合わせショート完全マニュアル』を出版。全国でのセミナーを行うほか、美容業界最大規模オンラインサロン『nex ACADEMY』 校長を務め、教育にも注力している。
Director桑名 真理子(くわな まりこ)
メイク技術者の目線を武器に、美容WEBマガジンの創刊、12年間で延べ1000件を担当。人の魅力にフォーカスする企画が得意。美容ライフが豊かになる、ワクワクする景色をつくります。
Photographer菊池 麻美(きくち あさみ)
多摩美術大学グラフィックデザイン科卒、2003年・2004年 CANON写真新世紀佳作。レゲエと海外旅行をこよなく愛するフリーランスフォトグラファー・シネマトグラファー。