今注目のヘアデザインを生み出す、あの人にフォーカス!bangsイチオシ☆スタイリストvol.01【イッシキケンタの世界】
bangs編集部がInstagramで目を止め、bangs読者からも大人気のスタイリストさんに突撃取材!
ヘアスタイルはもちろん、洗練されたファッションやメイクで唯一無二の世界観をつくるクリエイティブ美容師さんをご紹介します。
記念すべき第1回目は、bangsでもヘアスタイルをご紹介させて頂いたLa familiaのイッシキケンタさんです。最新のヘアスタイルとともに、イッシキケンタさんの頭の中をのぞいてみましょう。
SPECIAL CONTENTS
2021.10.26
イッシキケンタさんってどんな人?
僕は日本三景の一つ「天橋立」がある京都府与謝野町で生まれ育ちました。高校卒業後は大阪の美容室で働きながら美容師免許を取得。美容業界誌で見るようなクリエイティブな作品をつくりたいと思い、上京しました。クリエイティブな情報を「受け取る側」から「発信する側」になりたかったんですよね。
なんのアテもないまま上京し、派遣美容師として働きながらLa familiaで働くことに。それから8年たち、今はサロンのディレクターとして、サロン全体のクリエイティブをレベルアップさせるために頑張っています。
おかげさまで今はInstagramのフォロワーさんも増えましたし、業界誌でデザインを発表することもできました。田舎から出てきて、何の後ろ盾もないまま反骨精神でここまでやってきて、少しずつ評価される機会も増えてきたことを、とてもうれしく思っています。
Instagramで発信するときに大切にしていること
流行りのスタイルをInstagramで発信してバズって、お客さまをたくさん集めている美容師さんがたくさんいます。それは戦略として正しいし、僕もそういうスタイルで発信していました。
でもあるとき「自分が好きなものに共感してくれるお客さまが集まるのが理想だな」と思ったんです。それから、自分がつくりたいもの、いいと思うものをストレートに発信するスタイルにシフトしました。
ヘアスタイルだけではなく、ときにはファッションやアクセサリー、メイクやポージングなど「見せたいポイント」を選んで出していくのが僕の撮影スタイルです。僕のInstagramを見ていただくとわかると思うのですが、髪にフォーカスしたヘアカタログ的な位置付けではないんですよね。
もしかしたら「美容師のくせに」と感じるアンチの人もいるかもしれませんが、好きな人に共感してもらえる世界観を発信できたら、それが正解なのかなと思っています。
ヘアのトレンドは、移り変わるものです。美容師たるものトレンドに敏感であるべきだから、もちろん吸収はします。けれども、僕は自分の世界観に共感して、お客さまがきてくださるのが理想だと信じている。時代が変わっても、支持され続ける美容師になりたいと思っています。
少し不思議な世界観をつくる、イッシキさんイチオシ作品
作品を通じて自分の世界観を表現しようとしているのに、ただキレイにカットしてカラーしただけのお客さまを真正面から撮るのは自分らしくないのかなと思っています。だから、お客さまのヘアを撮らせていただくときも、ちょっと工夫するようにしたんです。
例えば、このpale lime(淡いライム)の切りっぱなしボブはお客さまスタイルですが、そのまま撮ってもおもしろくないので、あえて毛の動きを出してみました。かなり反響がありましたね。
お客さまのスタイル撮影でも、世界観にこだわる
続いてこちらの作品もお客さまのスタイルです。後ろ姿からではわからないかもしれませんが、すごく雰囲気のある男性です。カチューシャは僕の私物をつかっています。
構図にもこだわっていて、あえて頭の上の空間をみせることで、抜け感を出しています。光のまわり具合もよかったですし、ただのバックショットではなく、自分の世界観も投影できてよかったです。
この方は美容師で、髪がロングでブリーチもしていたのでこのホワイトベースの色も似合うんじゃないかなと。彼なら似合うだろうと思ってやった結果です。自分でも納得の撮影でした。
ファッション感度が高いお客さまを狙い撃ち
次はイエローのウルフですね。実は彼女はサロンのスタッフで、僕がカットして染めているんですけれど。
普通に撮るよりも何か動きをつけたいということで、ちょっと頭を傾けてもらいました。ファッション感度が高くて、ハイトーンカラーに関心がある人たちが見てくださったのかなと思います。
ちなみに、毎月の新規のお客さまのうち、10人くらいは美容師さんなんですよ。郊外のサロンにお勤めで、自分で撮影するのも好きだから、僕のところに撮影の話を聞きにきてくれたりします。あとは、勤めているサロンでできる人がいないヘアをやりたいから、僕のところにきてくれるケースも多いです。
もともと僕は情報を発信する側に立ちたいと思っていたので、僕のInstagramを見てサロンにきてくれる美容師さんがいるのは、とてもありがたいことです。
一番表現したいポイントを際立たせる
続いて、モデルさんに協力してもらって撮った作品を紹介します。まずはこちら。
この作品はヘアの動きをメインで見せたいと思ってつくった作品です。イエローとオレンジのグラデーションのメイクとカチューシャ、それに差し込む光を加えて、不思議な雰囲気を出したいと思って撮影しました。
モデルさんのくせ毛を生かして、ちょっとオイルをつけて動きを出しています。ちなみにこの光は偶然ではなくて、モデルさんの瞳と重なるように計算して入れているんですよ。
非日常や不思議な雰囲気を出すために工夫していること
僕は背景の白に、モデルさんがヘアやポージングなどの事象を浮かびあがらせることが好きです。屋外ロケなどをすると、どうしても日常っぽくなってしまう。僕は非日常や不思議な感じを出したいので、白をバックにしています。この作品はその典型です。
実はこれ「HUNTER×HUNTER」のキャラクターが覚醒したとき、髪がふわっと上がるシーンからインスパイアされています。黒髪で凛としたお顔のモデルさんなら、この雰囲気にあうかもしれないと思い、チャレンジしました。
ちなみにこの作品は、クリエイティブな美容師さんからもたくさん「いいね」をもらって、うれしかったですね。密かに、美容師さんからのリアクションを期待していたんですよ。
「いいな」と思った構図を、イッシキ流にアレンジして表現
モデルさんを寝かせて、手を挙げるポージングをやって見たいなと思ってPinterestで探していたらおしゃれな写真があったので、それをオマージュしました。
モデルさんが横に寝転がったときの髪の動きや、見え方にこだわっています。この毛流れはストレートでもなく、ウェーブでもなく、無造作にちょっと散っているような感じに。あまりつくり込みすぎず、この世界観にマッチするように工夫しました。
手の動きをしっかり作り、そこを強調するファッションアイテムを選んでいます。たとえばこの服は、袖のボリューム感がありますよね。そのほか、光の入り具合なども綿密に計算しています。
お客さまやモデルさんの魅力を引き出してこその「世界観」
正直、まだまだ美容師として、表現者として、自分に足りない部分もたくさんあります。それでも自分の世界観を表現し続けてきたから、ある程度認知してもらえたのかもしれません。
ただ、僕は自分の世界観だけを打ち出したいとは思っていません。お客さまやモデルさんが持っている魅力を引き出してこその世界観だと思います。これまで評価していただいた作品は、それが少しはできていたからだと思うんですよね。
だから僕はカウンセリングがとっても長いんですよ。お客さまの普段のファッションやメイクについてヒアリングしたり、どんなライフスタイルで、理想の女性像はどんな感じで…という情報を引き出して、理解した上で提案していくことを意識しています。
これは作品づくりに限ったことではありませんが、自分と関わる人たちの良さを伸ばしてあげられるような人間を目指していきたいです。
イッシキ ケンタ
京都府出身。大阪府内の美容室で働きながら高津美容専門学校通信課程で美容師免許を取得。業界誌を賑わすクリエイティブな美容師を目指し、上京。紹介予定派遣の美容師としてLa familia に入社し、サロンワーク、クリエイティブワークの技術を磨く。目標だった業界誌掲載やヘアコンテスト入賞などを実現。トレンドを取り入れつつ、オリジナルの世界観に落とし込む作品が人気で、同業者からの評価も高い。
Director桑名 真理子(くわな まりこ)
メイク技術者の目線を武器に、美容WEBマガジンの創刊、12年間で延べ1000件を担当。人の魅力にフォーカスする企画が得意。美容ライフが豊かになる、ワクワクする景色をつくります。
Writer外山 武史(とやま たけし)
SUKETTO LLC代表。インタビューをした美容師さんの人数は延べ1000人以上。いつも美容師さんの味方でありたいと願うライターです!