地球に優しく、美しく生きる 「サスティナブル、はじめの一歩」【前編】

「温室効果ガスを減らすことができなければ、地球を救える時間はあと4年」という衝撃的な調査があることをご存知ですか。持続可能な地球にするために私たちに何ができるのか? 美容業界の「サスティナブル大使」と称されるLondグループ代表の石田吉信さんに「明日から実践できるサスティナブル」を伝授していただきます。インタビューは前後編の2本立て。今回は前編です。
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2021.07.27

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このままでは社会が破綻してしまうかもしれない

今の世の中はすごく便利ですよね。ただ、みんなが環境への影響をさほど考えず、利己的な判断をしてきたから社会問題が起こっています。そのことに気づきはじめた人もたくさんいて「SDGs」の動きが大きくなっていますよね。「SDGs」とは「持続可能な開発目標」の略称。作る側も、消費する側も、持続可能な社会をつくるための選択をしていきましょう、ということです。

代表的な社会問題の一つが「生物多様性の崩壊」です。1日何十種類も絶滅していると言われていて、生態系へ大きな影響を与える「キーストーン種」も危機に瀕しています。

例えば国連環境計画(UNEP)アヒム・シュタイナー事務局長は、2011年に「世界の食料の9割を占める100種類の作物種のうち、7割はハチが受粉を媒介している」と報告しました。そんな人間の暮らしに欠かせないミツバチが、農薬などによって激減し、世界中に姿を消しているんです。このままでは多くの野菜や果物がつくれなくなるかもしれません。

気温上昇も深刻です。1800年代後半の産業革命から世界の平均気温が1度以上上昇しています。1.5度を超えると壊滅的な影響が出るとIPCCが予想しており、例えば南極の氷が溶けて海水面が上昇し、沈む島が出てきます。

そうでなくても島の面積が減って農地も減るので、仕事を失う人が出てくるでしょう。日本も異常気象が増えて川が氾濫したりしていますが、同じことが、インフラが脆弱な途上国で起こったらとんでもないことになります。

最近でも、インドやベトナムの巨大サイクロンで何十人という人が亡くなりました。このほか、シベリアの気温が30度代まで上昇したり、これまでなかった異変があちらこちらで起こっています。

温暖化の影響は身近なところにもたくさんある

水温上昇の話がなかなか自分ごととして捉えられない人もいるかもしれませんが、それは間違い。例えば、サーフィンが好きな人はこのままいくと快適なスポットがなくなるかもしれません。なぜならビーチがなくなるから。これはサーフィンに限ったことじゃなく漁業関係者など色々な人たちが影響を受けています。

では持続可能な社会のために何ができるのか。毎日の選択を少しずつ変えることで、CO2の排出を抑え、限りある資源の節約や再利用につなげることができます。例えば、今日僕が着ているシャツは下北沢kimamaで買った古着です。

当たり前の話ですが、古着を買うことによる環境負荷はありません。リサイクルポリエステルの服をつくったり、オーガニックコットンを選んで服をつくるのもいいけど、すでにある服をリユースしたほうが資源の消費やCO2排出を抑えられます

古着の文化って昔からあるから意外と見落としがちですが、もっとフィーチャーされていい。カジュアルなものからドレッシーなものまでいっぱいあるし、ブランド古着を扱うお店もあるから、服を買うときの選択肢に取り入れるのは大いにアリです。

再エネ電気を選べばCO2排出を激減させられる

電気を選ぶのも超大事です。家庭におけるCO2排出量の50%は発電由来だとされています。(※参考サイト) 石炭や石油、ガスなどの燃料は燃焼するときにCO2を排出するからです。つまり再生可能エネルギーから発電している電力会社に変更するだけで50%もCO2の排出量を減らせる。

「みんな電力」や「パルシステム電力」などいろいろ優良な省エネ会社があるので、興味ある人は調べてほしいです。(※参考サイト) 僕は絶対に変えたほうがいいと思いますね。

Londグループでは、Instagramにてサスティナブルに関する情報をわかりやすく発信
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環境のことを考えて選ぶと、普段より少しコストがかかることが多いです。それで躊躇する人もいると思いますが、ちょっと考えてみてください。例えば、無農薬野菜は農薬を使った野菜よりも高いと思います。農薬を使えば害虫を防げるから生産性が高くなり、価格を下げられます。

一方で、残留農薬の心配があります。無農薬野菜は手がかかるので大量生産に向かないけれど、健康被害の心配がない。安いのには安い理由があるし、高いのにも理由がある。なのに、日本人は安さで選びがちなんですよね。

一人の力は小さいが、積み重ねたらとてつもない力になる

Londグループでは「SUSTAINABLE MAGAZINE」を発行。セット面で熱心に読むお客さまが多い
Londグループでは「SUSTAINABLE MAGAZINE」を発行。セット面で熱心に読むお客さまが多い

サスティナブルな取り組みが進んでいるのがドイツです。これは環境アクティビストの谷口たかひささんの経験談ですが、ワーキングホリデーでドイツに行ったとき、部屋のクーラーを消し忘れたまま外出してしまったそうです。

帰宅したときホストマザーに言われた言葉が「クーラーをつけっぱなしにしたら環境に悪いじゃない!」でした。電気代がもったいないから、とかじゃないんですよ。

地球を持続可能な星にしていくためには、どの選択肢を選んでいくかがとても大事。一人の消費者にできることは限られていますが、国民一人ひとりができることを積み重ねたら大きな力になります。

日本の食品ロスは年間約600万トンです。(※参考サイト) これは毎日1人1個おにぎりを捨てている計算になります。1億2000万個のおにぎりが捨てられているわけです。これは「つくりすぎ」と「買いすぎ」をやめれば解決できる。日常の選択の中でロスを減らせるわけです。

CO2の排出を減らすという意味で、実は菜食も効果的。なぜなら家畜は大きくなるまでにたくさんの餌を食べ、水を飲み、CO2を排出しています。一方で野菜は、水は使うけれども家畜よりは断然少ない量で済むし、CO2も排出しません。食肉を大豆ミートにしたら環境負荷を軽減することができます。大豆ミートはもっと身近になるはずなので、みんながそっちを選ぶようになれば肉が高くなって生産が減るかもしれません。

ソロキャンプが趣味の石田さん。食材も大豆ミートをセレクト
ソロキャンプが趣味の石田さん。食材も大豆ミートをセレクト

だからといって、ストイックなベジタリアンになれっていうわけじゃないんです。例えば、月曜日だけ肉をやめてみるとか、普段は菜食だけど人といるときは肉を食べるとか、フレキシブルでもいいと思う。最初の一歩は、軽い気持ちで十分なので、今日から一つひとつの選択肢を意識してみてください!

PROFILE
プロフィール
石田 吉信
Londグループ 代表取締役/CSRエキスパート

石田 吉信Yoshinobu Ishida

東京都出身。日本美容専門学校卒業。Lond group6人の代表の一人。サスティナビリティーやCSRを推進し、ソーシャルグッドなブランディングを日々実践中。美容業界のサステナビリティへの取り組みを日々模索中。CSR検定2級。

EDIT
編集
桑名 真理子

Director桑名 真理子(くわな まりこ)

メイク技術者の目線を武器に、美容WEBマガジンの創刊、12年間で延べ1000件を担当。人の魅力にフォーカスする企画が得意。美容ライフが豊かになる、ワクワクする景色をつくります。

外山 武史

Writer外山 武史(とやま たけし)

SUKETTO LLC代表。インタビューをした美容師さんの人数は延べ1000人以上。いつも美容師さんの味方でありたいと願うライターです!

Ricco.

IllustrationRicco.

パッケージや雑誌、施設の壁画や広告のイラスト制作の他、イベントでの似顔絵パフォーマンスも行っています♫