地球の未来のために、美容業界を変えていこう「サスティナブル、はじめの一歩」【後編】

「温室効果ガスを減らすことができなければ、地球を救える時間はあと4年」という衝撃的な調査があることをご存知ですか。持続可能な地球にするために私たちに何ができるのか? 美容業界の「サスティナブル大使」と称されるLondグループ代表の石田さんに「明日から実践できるサスティナブル」を伝授していただきます。インタビューは前後編の2本立て。後編は美容業界向けのメッセージです。

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2021.08.06

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目 次

LondグループのCSR活動は銀座のゴミ拾いから始まった

2016年のカンヌ国際映画祭のパルムドール最高賞を取ったケン・ローチ監督の作品『わたしは、ダニエル・ブレイク』。複雑な制度に翻弄され、人としての尊厳を踏みにじられ、貧困に苦しみながらも、助け合い生きていこうとするダニエルとケイティ親子との心の交流がテーマの映画であり、80代のケン・ローチ監督から社会に向けて最後のメッセージが詰まっていました。鑑賞し終わった後、僕はこう思ったんです。

「自分に何ができるんだろう…?」

自分はもちろん、Londグループで何かできないか調べて「CSR」という言葉に辿り着きました。CSRはCorporate Social Responsibility(企業の社会的責任)の略語です。CSRのくくりで社会貢献ができるかもしれないと思いCSR検定を受けました。その過程でSDGsの勉強会の存在を知り、本格的に活動をスタートしたんです。

Londとして最初に取り組んだのはゴミ拾いでした。「きもちいクウキプロジェクト」という名前で今もやっています。一歩目が重要だと思っていたので、みんなに協力してもらうための工夫をしました。

いきなり全体朝礼などでやっちゃうと「誰がやるの?」みたいな空気になってしまうかもしれない。なので、一人ひとりバックルームに呼んで、全員に「僕らが豊かに楽しく働けているのって銀座のおかげじゃない? 銀座に感謝したくない? ゴミ拾いとかどう思う?」と話して、じわじわと賛同者を増やしたんですよ。

25万軒ある美容室が、明日の地球のためにできること

美容師や美容室ができるSDGs活動っていっぱいあると思います。例えば、日本全国に25万軒ある美容室の電気が、再生可能エネルギー由来になれば、ものすごい影響がありますよね。

すでにLondグループはすべての電力を「みんな電力」に切り替えました。再生可能エネルギーから電気をつくって供給している会社はたくさんあるし「パワーシフトキャンペーン」という再エネ電気を普及する取り組みも盛り上がっているので、美容室オーナーさんに是非知っていただきたいです。

Londグループではシャンプーの量り売りも始めましたが、これももっと広がってほしい。シャンプーの中身だけを販売することで、プラスチックの容器を再利用できるので廃棄物を減らせます。ドイツには容器持参の量り売りショップがたくさんできているそうです。

正直、シャンプーの量り売りを始めたばかりのころはハードルが高いかなと思っていました。2020年の6月からスタートして132L以上売れています。意外と売れたなという印象です。スタイリストにその理由を聞いてみると、環境に関心があるお客さまが関心を持ってくださるとのこと。今はまだ同じことをしているヘアサロンもないので、選んでいただけているのかなと思っています。

ちなみに、シャンプーの量り売りをLondグループの専売特許にするつもりはありません。業界のスタンダードにしたいんです。量り売りをすると手間はかかるけれど、難しいことをしているわけではありません。

「量り売りをするときにシャンプーの全成分表示が記されているカードを渡す」とか、「お客さまの名前と販売した日付、スタイリストを記録する」などの衛生管理上のルールを守ればどこのサロンでもできることなんです。SDGsに取り組む美容室っていうブランディングにもなると思います。

お客さまや環境、そして美容師にも優しい選択肢がある

2021年の5月末にLondグループから「トリートメントで染める新感覚のカラー PALABO」をリリースしました。ダメージの原因となる『アルカリ剤』と『過酸化水素』と使用せず染めるたびにダメージを補修できる、今までのカラーとは全く異なる新しいシステムケアです。

カットからトリートメントは1時間半、1時間でもできる可能性があります。時短効果で生産性が向上しますし、サロンに長時間滞在したくないお客さまのニーズを満たすこともできます。

ビビッドなカラーも一般的なカラーも出すことが可能。できるだけ廃プラを出さないためにパッケージはパウチ仕様にしましたし、売上の一部は沖縄のサンゴを保護するNPOに寄付します。みんなが得をする社会貢献のカタチがあっていいと思うんです

LGBTQの知識が接客の質向上と、違いを尊ぶ会社づくりにつながる

ここまで環境問題に関連する取り組みを紹介してきましたが、美容室経営においては人権意識の向上も大きなテーマだと思っています。

Londトレンドクリエイティブチームというシーズントレンドを発信するチームがあるのですが、この春のこのビジュアルからダイバーシティやLGBTQの要素をメッセージとして落とし込んでビジュアルづくりをしています。

地球を持続可能な星にしていくためには、どの選択肢を選んでいくかがとても大事。一人の消費者にできることは限られていますが、国民一人ひとりができることを積み重ねたら大きな力になります。

それとともに「LGBT系とは何か」「ダイバーシティとは何か」「ジェンダーギャップとは何か」という勉強会をスタートしました。

お客さまの見た目が女性だからといって「彼氏はいますか?」などというのはNG。「パートナーはいらっしゃいますか?」というのが配慮ある美容師の姿です。よくある「ハーフ」という表現も問題で、「ミックス」のほうがベター。ハーフは半分っていう意味だから失礼に当たるし、半分ずつ遺伝しているわけではないからです。

こうした知識は接客で必ず必要になるし、普段から意識を高めておくことが重要。その延長線上で考えているのは、LGBTQのカミングアウトをしやすい職場環境です。11人に1人の割合でいると言われていますから、Londグループにも必ずいるはず。違いを尊重する組織をつくりたいですね。

今はまだサスティナブルやSDGsに本気で取り組もうとしている人はまだ少数派だと思います。パンクファッションの生みの親であるヴィヴィアン・ウエストウッドは「サスティナブルは現代のパンクである」と言っていました。感度の高い美容師にこそ、今から新しい生き方をスタートさせてほしいです。

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PROFILE
プロフィール
石田 吉信
Londグループ 代表取締役/CSRエキスパート

石田 吉信Yoshinobu Ishida

東京都出身。日本美容専門学校卒業。Lond group6人の代表の一人。サスティナビリティーやCSRを推進し、ソーシャルグッドなブランディングを日々実践中。美容業界のサステナビリティへの取り組みを日々模索中。CSR検定2級。

EDIT
編集
桑名 真理子

Director桑名 真理子(くわな まりこ)

メイク技術者の目線を武器に、美容WEBマガジンの創刊、12年間で延べ1000件を担当。人の魅力にフォーカスする企画が得意。美容ライフが豊かになる、ワクワクする景色をつくります。

外山 武史

Writer外山 武史(とやま たけし)

SUKETTO LLC代表。インタビューをした美容師さんの人数は延べ1000人以上。いつも美容師さんの味方でありたいと願うライターです!

Ricco.

IllustrationRicco.

パッケージや雑誌、施設の壁画や広告のイラスト制作の他、イベントでの似顔絵パフォーマンスも行っています♫