どのヘアスタイルもパーフェクト美容師! 枝村仁ヘアスタイリスト図鑑!【後編】

「三度の飯よりボブが好き」を座右の銘に、確固たるカット技術を武器に教育のパイオニアとして活躍されている枝村仁さん。オンラインサロンや日本全国を駆け回り講師活動をされるなど美容改革教育者として日々邁進されています。今回はそんな枝村さんに、これまでのキャリアや教育への思いを前後編でお届け! 後編は、ボブに対するこだわり、また今後の教育の可能性についてお伺いしました。ぜひ最後までご覧ください!

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SPECIAL CONTENTS

2024.03.22

INDEX
目 次

枝村仁さんってこんな人

枝村 仁(えだむら じん)

茨城県出身。理容室を営む両親と美容師の姉からの影響で、美容の道へ。高校卒業後に山野美容専門学校の通信科へ進学と同時に埼玉県内のサロンへ入社。15年間の勤務の中で教育やマネジメントまで経験。2016年にフリーランスとして越谷のサロンで働き始める。埼玉でサロンワークをしながら、セミナー講師やオンラインサロン「JIN’s BASIC CUT ACADEMY」運営、認定講師の輩出などさまざまな活動をしている。著書に『最短距離で切れるベーシックカット』『脱感覚 セニングのすべて』(髪書房)がある。

テーマは『一生愛される美容師』。そのために大切にしてる、ポリシーとは?

ー枝村さんが教育の重要性に気づいたきっかけは?

セミナー活動をやっていくことで、徐々に教育の奥深さにひかれていきました。僕がセミナー活動を始めた24,5歳のころは、先代が築き上げたベーシックカットのカリキュラムはありましたが、時代に合わせてアップデートしたものが少なかったんですよね。

そこを変えていこうと講師活動に力をいれ、自分のベーシックカット理論『最短距離で切れるベーシックカット』を出版しました。24歳からやっていたセミナー資料をぎゅっと濃縮し、20年分の内容を詰め込んだ集大成のような本です。本に付属した47都道府県セミナーツアーチケットの反響も上々で、一昨年・去年と全国各地を巡りました。

ー出版した本に無料のセミナー招待チケットをつけたのが、センセーショナルです。

応援してくださった方へ還元したいなと考えて、チケットをつけました。当時はフォロワーが1500人くらいで、そのころから僕を知ってオンラインサロンやセミナーを盛り上げてくださったことで本を出版できましたし、恩返しをしたいなと。それにどういう人たちなのか、実際に会いにいきたくなったんです。

ーボブカットの技術を軸にセミナーをされていますが、枝村さんがボブスタイルをに焦点を当てた理由は?

元々スタイルの中でもボブが特に可愛いと思っていて、サロンワークやカットコンテストで切っていたら楽しくなりました。ボブは幅広い技術力が必要なスタイルなのでどんどん極めたくなるスタイル。「三度の飯よりボブが好き」を座右の銘にするほど、ボブの虜。

いろんな年齢層の人が取り入れやすいのもボブの魅力ですね。枝村流ボブのポイントはフォルムの丸さと、収まりがよくてもちも抜群です。

クセの強い髪質だと美容師さんによってはボブを止められたり縮毛矯正を勧められるそうですが、僕は髪質を見抜いてカットし、どんな方でも理想のボブに仕上げます。

収まりを良くするポイントは、セニングの理論。セニングは根元に入れてはいけないと言われてきましたが、僕は根元からセニングを入れて毛量を調整します。中間ばかりをすいてしまうとスカスカになって次のスタイルに影響が出ることがあり、持続性が出ません。

先の先まで見越して提案するのが美容師としてのプロ。次にやりたいヘアスタイルに対して、必要な毛がないからトライできないのは避けたいので、きちんと先々の要望を伺い、段差やすき具合を変えています。

根元にハサミを入れるのは勇気がいりますので、セミナーではしっかりハウツーを伝えていますね。このセニングの技術を手に入れたら、きっと「どんな人でもボブカットできる!」と無敵な気持ちになりますよ。今まで跳ねてしまったり多毛や癖毛で広がってしまうなど悩んでいた美容師やお客さまほど、収まりのよさにみなさん驚いています。

ー枝村さんが担当しているお客さまはどういった方がいらっしゃいますか?

共に歳を重ねている同世代の30〜40代が中心です。ボブしか切ってないと思われがちですが、いろんなヘアスタイルを施します。メンズと女性の比率は半々で、カップルやご夫婦で来てくださる方も多いですね。

僕の美容師としてのテーマは『一生愛される美容師』。お客さまと何年経っても「この人に切ってもらいたい」と信頼関係でつながる美容師でありたいと考えてます。

ー枝村さんのようにファンになってもらうために大切なことは?

人に興味を持つ」ことですね。前編でもお伝えしたように、浅く広くより狭く深く繋がりたいタイプ。今年成人式のヘアを担当したは、4歳から切ってるお客さまでした。目の前のお客さまに関心を持って一人一人の人生に長く寄り添えることがやりがいです。

『一生愛される美容師』でいるという信念は、決してブレることはありません。

日本の美容室の教育者として、業界の未来を変えていく

ー現在は埼玉でサロンワークをされていますが、都内に出る予定は?

20代までは都内への憧れはありましたが、今は特に願望はありません。実は24歳ごろに一度本気で都内に出ようと計画していたことがあったんです。その年の正月、母へ報告すると「あなたにこの仕事教えてくれたのは、誰なの?」という言葉が返ってきました。

勤め先に恩返しがしきれていない中で、新しいことをしてもうまくいかないと止められて、確かに…と納得し、それ以来サロンや周りのために自分は何ができるかを考えるいい機会になりました。

その翌年に結婚して26歳で第一子が生まれてから、より人のため、店のために動いていこうという気持ちにシフトしましたね。周囲のために行動するようなったターニングポイントです。

ちなみに次女の将来の夢は、美容師。子供たちが社会人になるころには美容業界がより良いフィールドになっていて欲しいので、一層教育に力を入れていきたいですね。

美容業界の未来をよくするためにも、課題の一つはやはり教育だと。

はい。業界の課題は求人・教育・集客、大きく分けてこの3つですが、集客は個人もサロンもブランディング戦略が上手くなってきていますし、求人もSNSやサービスを活用してやり方はいくつもある。ただ教育は、まだまだ耕していく必要性がありますね。

今はサロン内でスタッフ教育するのが支流ですが、せっかく一人前に育てた人材が退職し、またゼロから育てては辞めていく…という循環が教育担当者としてキツいんですよね。ここが内部教育の難しさでもあります。

教育者は人間性も問われるので、尊敬できるスタッフから教えてもらえないと、教育される側のモチベーションも変動します。その点、外部の教育者はフラットな関係性なので、教育が浸透しやすいと僕は考えてます。

僕がサロンを持たないのは、日本の美容室の教育者になりたいから。サロンを持つとサロンやスタッフが大事になるのは当然なので、あえて外部から教育を伝えています。現在は8社、これまでトータル15社ほど担当しました。

世界中を一つの教室にする! フラットに学べる時代を創りたい

ー教育のパイオニアである枝村さん。教育者としてのやりがいは?

教育はGIVE。子供を育てるのと同じ感覚です。根気が入りますが、昨日までできなかったことができるようになる瞬間に立ち会えますし、人の成長を間近で見届けるたびに感動とやりがいを感じますね。

泥臭い世界ですが、嫌になることは今まで一度もありません。人が好きという根底があるから、向いているんでしょうね。

僕は教育を美容師のセカンドキャリアにしたいと考えていて、教育できる人を育てるアカデミーを作りました。カリキュラムを学び認定試験に受かった美容師さんが、各地でサポートセミナーを担当し活動しています。そんなふうに今後教育を軸に活躍する美容師を増やしていけたらいいですね。

現在は教育活動がメインで動いていて月火をアカデミー、水木金で各サロンに教えに行き、土日サロンワークの毎日です。40歳までにはサロンワークを趣味のように楽しめるボリュームにしたいと思っていたので、このバランスは理想的です。

ーほとんどお休みなし! 枝村さんはオフラインでの活動も注力されているんですね。

今は、オンラインで広げたコミュニティーをあえて狭くしています。インスタで認知が広がって支持してくださる人がいたおかげで40歳に本を出す夢が叶いました。その本を買ってくれた人たちがセミナーにきて、学んだ方の何人かはアカデミーに入って教育者になっていく…。一旦広げたものを狭くしてコンテンツをクローズドさせることがファン化につながっています。

−数々の目標を叶えている枝村さんの、次なる展望は?

世界を一つの教室にする』を目標に立てています。現在、韓国でもアカデミー制度を組んでいて、すでに認定講師も生まれています。日本から、アジア全土、ゆくゆくは世界中でフラットに教育できるように10年で実現したいですね。

ちょうど今年の3月で美容師になって22年になりました。22年の月日の中で目標として掲げていたものを着々とと叶えてきましたが、僕はまだ夢半ば。やりたいことは明確に決まっているので、最適な手段を選択し関わる人を大切にして、これからも挑戦していきます。

PROFILE
プロフィール
枝村 仁

枝村 仁(えだむら じん)

茨城県出身。理容室を営む両親と美容師の姉からの影響で、美容の道へ。高校卒業後に山野美容専門学校の通信科に進学と同時に埼玉県内の大型店へ入社。15年間の勤務の中で教育やマネジメントまで経験。2016年に独立。埼玉でサロンワークをしながら、セミナー講師やオンラインサロン「JIN’s BASIC A CADEMY」運営、認定講師の輩出などさまざまな活動をしている。著書に『最短距離で切れるベーシックカット』『脱感覚 セニングのすべて』(髪書房)がある。

EDIT
編集
桑名 真理子

Director桑名 真理子(くわな まりこ)

メイク技術者の目線を武器に、美容WEBマガジンの創刊、12年間で延べ1000件を担当。人の魅力にフォーカスする企画が得意。美容ライフが豊かになる、ワクワクする景色をつくります。

トカジ ショウタ

Photographerトカジ ショウタ

人気美容師として活動する一方で、写真&映像クリエイターとして活躍中。サロンのIV/CM/コーポレートビデオ、芸能事務所のMVなども手掛け、業界から注目される。