どのヘアスタイルもパーフェクト美容師! gricoエザキヨシタカのヘアスタイリスト図鑑!【前編】
サロンワークのみならず商品開発やアパレル事業、TV出演や書籍発行など美容師の枠を超えた取り組みで業界内外から注目されているgricoの代表エザキヨシタカさん。今回はそんなエザキさんに、これまでの美容師キャリアやヘアスタイルへのこだわり、今年で15周年を迎えるgricoの軌跡を前後編でお届け! 前編は、美容師として大切にしているポリシーやサロンの強みをお伺いしました。ぜひ最後までご覧ください!
SPECIAL CONTENTS
2024.10.23
エザキヨシタカさんってこんな人
grico/代表
エザキ ヨシタカ
2009年わずか24歳で原宿に「grico」をオープン。美容業界を牽引するレジェンド美容師として美容師の新たな在り方に対し、常にアプローチを仕掛ける。芸能人、コレクションのヘアメイク、TV出演、アパレル業、商品開発、コンサルティングなど多方面で活躍。業界を超えて多くのメディアから注目されている。
「個性」を強く意識しなくていい。生まれたときから、みな違うのだから。
ー 常に時代をリードするハイエンドサロンgrico。サロンの強みは?
オープン当初から掲げている3つのコンセプトが、gricoの真骨頂ですね。一つ目は「常に時代の一歩先を行くおしゃれを提案し続けているのに、どことも違う遊び心を持ったサロン」です。
原宿・表参道で勝負していますから、センスを先駆けしてトップレベルの技術を提供できるよう努めています。一方でハイセンスサロンは緊張するお客さまもいらっしゃるので、「遊び心」を感じるデザイン提案やプロダクトの開発、心地の良いコミュニケーションを大切にしていますね。
二つ目は「スタッフもお客さまも大切な家族」をテーマに、関わるすべての人に思いやりを持って接しています。15年来のお客さまも多く、中には4世代で通ってくださる方も!僕のお客さまと一緒に来ていたお子さんが大学生になり、今はgricoの店長が髪を切っているなど、嬉しい関係性も生まれています。スタッフとお客さまの輪が広がり、大きな家族になっている気がしますね。
今はサロンワークに限らず商品開発や外部顧問など業務は多岐に渡りますので、ストレスフリーな方と仕事をするようにしています。好きな人とやっていると、遊びみたいな感覚で心地よく仕事ができるんですよ。
体の疲れよりも心の疲れの方がどっと負荷がありますので、誰と仕事をするかは大事。スタッフにも「幸せにしたいと思った人と働きなさい」と伝えてますね。
周りの人たちと絆を深めて家族のようになれたのは、一流の美容師を目指し懸命に過ごしてきたから。三つ目のコンセプトである「世の中にかっこいいを見せる」を念頭に、美容師としてだけでなく人として一流の人間でいることに注力しています。
例えば、つねに先を見据えて心身のパフォーマンスが上がる習慣を取り入れてみると、一流の人と同じ流れを取り入れられます。そういった地道な努力を15年間積み重ねて、gricoが唯一無二の愛されるサロンへ成長しているんです。
ー とても素敵なスタッフさんが在籍されているようですが、みなさんの魅力は?
共通点は人が好きなところ、そしてgricoへの愛が強いことですね。今いるメンバーは思いやりに溢れた子が集まっています。自分の家族や友人をとても大事にしていますし、根っから優しいタイプですね。
採用基準もgricoにフィットする人間性を見ています。つい面接となると個性を主張してしまうと思いますが、そもそも生まれたときからみんな違うので、強く意識する必要はないんですよ。僕は本来「個性」はないと考えています。
ー とても興味深いです。個性がないという真意は?
例えば目の前にスツールがあるとして、モノが置いてあったら周囲は「テーブル」と言うし、誰かが座っていたら「椅子」になりますよね。要は、スツール自体は何者でもなくて、関わる人たちが価値を示しているんです。
これは人間も一緒。相対的に見てもらうことで、自分の価値が見出されます。それなのに、今はSNSなどの影響もあって大事なものが自分に向いてしまっていたり、自己を発信しようとしすぎてますね。
美容師は本来、人を幸せにする職業。お客さまがいて成り立つ職業ですから、自分たちが中心になってしまったら、本末転倒です。
まずは何のためにその仕事に就くのか、「誰を幸せにしたいのか」を考えて行動する。それだけでいいんです。
僕も誠心誠意で行動して思いやりを持って周りと接してきたつもりですが、以前は深いところまで向き合えていなかったのかも…と最近反省したことがあります。
生きていたら誰しも辛いことがありますが、僕は昨年愛娘を亡くして耐え切れないほどの深い悲しみに沈んでいました。同じように喪失されているお客さまが誰にも話せなかったことを共有してくれることが多くなったんですね。SNSから「エザキさんの言葉で、もっと生きようと思えた」とか「一歩前に進める気がする」といったメッセージが5000人近く届きました。
裏を返せば、以前の僕には話すことを躊躇した方もいたということ。今の自分だからこそ、本当の意味でお客さまに寄り添うことができているんじゃないかと思っています。そのためにも教養を身につけることを大切にしていますね。自分が導き出した答えをお客さまにお伝えして、何かの力になっているなら僕も救われます。
ー 自分なりの答えを導き出すとき、エザキさんはどのようなことをしてますか?
めちゃくちゃ本を読みます。養老孟司さんや生物学者の福岡伸一さんの本は、特に人生観が変わりましたね。
「ゆく川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」という言葉をご存知ですか? これは『方丈記』の冒頭にある川の描写で、生命もそのようだと福岡さんは言っています。
流れゆく川の水は絶えることがないけれど、水そのものは変わっている。人間も見た目は大きな変化がなくても、数ヶ月で全ての細胞が入れ替わっています。放っておくと老廃物がたまるなどして生命は成り立たなくなりますから、大きく変わらないために小さく変わり続けてるんです。仮に死を迎えても、その細胞は漂ってどこかに存在しています。
自然や動物からいただいたものを自分の一部にして不要なものを自然に還すと、また別の命につながっている。私たちは周りの細胞と支え合ってると考えると、利他の心が溢れてきます。
仕事になるとつい自分よがりな考えに陥ってしまいがちですが、美容師の目的はシンプル。目の前のお客さまにどのくらいの熱量で向かうことができるのか、そこがベースにないといけないんです。お客さまがいて美容師をやることができていますから。
『気怠さ』と『遊び心』が調和する、gricoならではのヘアデザイン
ー gricoが発信する、ヘアデザインのポイントは?
抜け感&外国人風のスタイルに特化し、一人ひとりに合わせたオーダーメイドのカットやカラーを施しています。特にふわっとした柔らかさで抜け感を出すスタイルは定評で、トップレベルの技術で再現性の高いヘアにはこだわっていますね。ナチュラルなものからエッジが効いたスタイルまで時代をリードする最旬ヘアを届けています。
ー エザキさんイチオシのヘアスタイルは?
雑誌の巻頭企画で撮影したこの2枚は、gricoらしさや自分の好きなものを詰め込んだ作品です。
このモデルさんはずっとgricoの撮影やヘアショーで切らせてもらっています。トップにレイヤーを入れ、カールで余白を持たせつつえり足の長さをやぼったく残し、ショートでもいろいろ遊べるデザインにしています。カラーはピンクとクリアを混ぜて彼女に1番似合う紫ピンクにしました。
撮影では世界観を大切にしているので、ヘアメイクやファッションなどトータルでバランスを見ながら、遊び心を取り入れています。僕は「気だるい女性」の表情やトーンが好きなんですね。今回も、ちょっと無愛想で目がうつろでありながらオシャレさを引き出しています。
もう一つはメンズヘア。このモデルさんとも長いお付き合いですね。彼はアンニュイで独特の雰囲気があり、芯の強い男性です。そういった強さを表現できたらいいなとカラーをキレイに入れずにあえてムラにして、フェードな感じにしています。gricoのヘアスタイルの代名詞である遊び心と僕が好きな気怠さの二つの要素を混在させて作ったスタイルです。
ー エザキさんが美容師として大事にしていることは?
技術と匹敵するくらい人間性を大事にしています。そのことを深く実感するお客さまがいらっしゃって。
以前、長崎のおばあちゃんに会う『カリスマ故郷に帰る』というテレビ番組に出て、それを見たのをきっかけに来てくだってる方なんですけど。歳を重ねて足が悪くなっても、僕のためにわざわざ原宿まできてくださっていて。SNSもしていませんから僕の活動の華やかな部分というよりは、美容師としての人柄を気に入ってきていただいていると思うと、嬉しい限りです。
これからも髪を切ることで、目の前の人を思い切り喜ばせて、関わる人全てを幸せにしたいです。gricoで過ごした時間を通して、彩りある豊かな人生につながっていたら本望ですね。
エザキ ヨシタカ
2009年わずか24歳で原宿に「grico」をオープン。美容業界を牽引するレジェンド美容師として美容師の新たな在り方に対し、常にアプローチを仕掛ける。芸能人、コレクションのヘアメイク、TV出演、アパレル業、商品開発、コンサルティングなど多方面で活躍。業界を超えて多くのメディアから注目されている。
Director桑名 真理子(くわな まりこ)
メイク技術者の目線を武器に、美容WEBマガジンの創刊、12年間で延べ1000件を担当。人の魅力にフォーカスする企画が得意。美容ライフが豊かになる、ワクワクする景色をつくります。
Photographer菊池 麻美(きくち あさみ)
多摩美術大学グラフィックデザイン科卒、2003年・2004年 CANON写真新世紀佳作。レゲエと海外旅行をこよなく愛するフリーランスフォトグラファー・シネマトグラファー。