どのヘアスタイルもパーフェクト美容師! gricoエザキヨシタカのヘアスタイリスト図鑑!【後編】
サロンワークのみならず商品開発やアパレル事業、TV出演や書籍発行など美容師の枠を超えた取り組みで、業界内外から注目されているgricoの代表エザキヨシタカさん。今回はそんなエザキさんに、これまでの美容師キャリアやヘアスタイルへのこだわり、今年で15周年を迎えるgricoの軌跡を前後編でお届け! 後編は、15周年を迎えた心境や新店舗の魅力、また今後の展望をお伺いしました。ぜひ前編 と併せてご覧ください!
SPECIAL CONTENTS
2024.11.06
エザキヨシタカさんってこんな人
grico/代表
エザキ ヨシタカ
2009年わずか24歳で原宿に「grico」をオープン。美容業界を牽引するレジェンド美容師として美容師の新たな在り方に対し、常にアプローチを仕掛ける。芸能人、コレクションのヘアメイク、TV出演、アパレル業、商品開発、コンサルティングなど多方面で活躍。業界を超えて多くのメディアから注目されている。
無駄なものを手放せるようになり、大切なものを温める日々
ー 今年で15周年を迎えたgrico。振り返ってみて、心境はいかがですか?
あっという間でしたね。いいこともそうじゃないことも紆余曲折ありながら、よく続けているなと思います。こうして頑張って続けてこれたのも、大好きな人たちが関わってくれているから。
大変なことも日々起きますが、15年間ずっと仕事が楽しいんですよ。これからもいろいろあると思いますが、そのときどきの流れにそって自分も周りも柔軟に変化して乗り越えていけると信じています。
ー エザキさんご自身は、この15年間でどのように変わり続けてきましたか?
24歳でgricoをオープンした当時、20代前半で独立した人は周りにいなかったんですよ。おかげでチャンスをたくさんいただき、数千人規模のイベントや、表紙撮影、商品開発など、やりたいことは全部やらせてもらいました。
振り返るとすごい尖っていたなと思う反面、そうしていないと保つことができなかったのかもしれません。曲がったことが嫌いで自分の考える正義があったので、業界の常識に疑問を感じることもありました。
僕は下積み時代の経験を反面教師にして、新しいエッセンスを少しずつ入れながら働きやすい環境を築いてきました。サロンの成長と共に、改めて自分やスタッフの人間形成ができましたね。ここ7〜8年くらいで、周りの美容室もかなり意識が高くなったように感じます。
今は前よりも自分が好きです。以前は無駄なことや人に時間を使いすぎていましたから。必要なことが大切にできるようになり、不必要なものは上手に手放すことができるようになりました。今は、家族とgricoスタッフを幸せにする。それ以上に最優先にするものはありませんから。
ーエザキさんはご家族のことも大切にしていて、美容師の働き方を改革してくださっていますよね。
結婚して子供が生まれてから、子育てのことや二週間ほど主夫を体験したことを取材していただき、すごく反響をいただきました。最近は、SNSなどで男性美容師の家庭的な一面をみることも多くなり、嬉しい限りです。
働くママは仕事以外にもこんなにやることがあるんだと日々実感しています。先日もご飯を作ったのですが、料理するだけでも大変なのに、賞味期限を見て「このお肉は今日中に使わないとな」と食材をチェックしたり、洗い物も家族分となると相当な量。さらに女性はホルモンの影響でコンディションが一定ではないでしょうし、想像以上にしんどいはず…。
身をもって体験すると、育児と仕事を両立ってこんなに大変なんだと深く理解できるようになりました。女性美容師をどのようにしてサポートしていくか考えるいい機会になりますね。
小さなことに靡かない。強くて素敵な女性たちが集まる新サロン
ー 今年は新店舗『grico NaniYo 』もオープンしましたね。いつごろから考えていたんですか?
以前から次の店を出そうと計画をしていて、いろんなエリアをリサーチしながらgricoっぽい場所を探していました。今年の春に1店舗目から歩いて30秒ほどのすぐ近くに、素敵な物件が出たので即決でしたね。
店舗名『 NaniYo 』は日本語の「なによー」の意味。世の中の小さなことに靡かない、強くて素敵な女性たちに成長してもらいたいという思いが込められています。今は僕も店に立っていますが、いずれは女性スタッフを中心に運営していくつもりです。
最近は、結婚・出産にこだわらずに女性の生き方も多様化していますから、スタッフそれぞれが自分の望む未来へ進んでくれたらいいですね。
ー 『 NaniYo 』店の入り口には、オシャレなお洋服がたくさん並んでいますね。
お客さまとスタッフを幸せにするための材料を少しでも多くしたいと思って、オープンから3年後にファッションブランド『grico clothing』を扱っていますが、NaniYo 店では厳選されたヴィンテージの洋服を取り扱う『 grico vintage』を展開しています。自分が着たくないものは取り扱わないほどこだわってるんです。
ヴィンテージの洋服は、映画やアート・音楽と精通しているので歴史やカルチャーを学ぶ勉強になります。美容師さんはトレンドなどを追うために時代の先を読むクセがありますが、年代ごとのファッションからヒントを得ることもあるはず。また、美容学生や美容師にとってファッションはブランディングの一つなので、grico vintageやgrico clothingを通してそう言った人たちと繋がることができて嬉しいですね。
美容師はアーティストの要素もあり、突然メディアから注目をされて急上昇することがあります。僕も独立したてのころから注目していただいてますが、世間はいつか絶対に見飽きます。だったら、勉強してつねに進化していたい。その一つの取り組みがgrico vintageです。何歳になっても人を惹きつける魅力や関わりたい。そう思ってもらえる人間性を養うために、日々学んでいます。
これだと決めつけすぎず、それぞれが提示する美容師のあり方があっていい
ー 美容師の枠を超えて活動するエザキさん。今後の展望は?
『grico vintage』がより有名になったらいいですね。ここ最近はファッション感度の高いアーティストや芸能の方もちょくちょく訪れてくれるようになりました。これまでgricoが先駆けして提案してきたメンズメイクや韓国ヘアなど今ではスタンダートになっているので、ヴィンテージ事業も新しい美容の未来に繋がるといいですね。
また、これまでは美容業界に関係することに注力して活動してきましたが、一年前くらいから業界外に向けた活動を軸にしています。そうしていかないと美容師の見られ方や価値を変えられないと思ったから。昨年からは、一般向けの商品開発に力を入れています。
『DONAN』(写真:左・中央左)のシャンプー・トリートメントは髪に必要な水分量を届けて髪がなめらかになる髪の美容液。少量でも泡立ちがよくホワイトティーの香りも好評です。
『SUISON』(写真:中央右)は、業界初の自宅でできる水素クレンジグ。水素は保湿効果が高く、抗酸化作用があり美白効果が期待できます。顔だけでなく、頭皮、全身にも使え、低刺激なのでお子さんもOK!
トリートメントの『mowari』(写真:右)は、紫外線によるダメージから髪を守り、厳選された保湿成分でまとまりのあるヘアスタイルをキープできる優れものです。
そのほかの取り組みとしては、『絵本』を作っています。シャンプーが嫌いな子どもたちのお話なんですが、ストーリーや絵がとっても素敵に仕上がっているので、大人にも響くものがあるはずです。
僕は昨年、本当に辛かったときに道も歩けなくなるほど全てが怖くなり、普通の生活ができなくなっていました。同じように生きていく中でどうしようもなく辛いとき、守ってくれるものやちょっと支えになる本があるといいなと、そんな思いで作った絵本です。会社を通して、そういった人たちに何かできることを今後も増やしていきたいですね。
また今年はさまざまな各地で災害が起き、今後も大きな地震が来ると予想されます。いざというときでもスタッフを守れる企業であり、他の美容室を手助けできるサロンでありたい。そのためにも今後も髪を切るだけではなく、鏡を通して派生するさまざまな取り組みを生み出していけたらいいですね。
一度きりの人生。同じようなことを繰り返すんじゃもったいない。美容師はこれだと決めつけすぎずに、gricoが作る美容師のあり方があっていいし、それぞれのサロンの姿があっていい。また、企業としてそろそろ外からの風を入れるのもいいかなと考えることもありますね。これまでにも慶應生がgricoに入社したいと志願してくれるなど、近い将来に新しい風が吹く予感がしています。
こんなふうにして仲間たちが示すgricoらしい働き方をして、関わっている人たちを幸せにしていきます。
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エザキ ヨシタカ
2009年わずか24歳で原宿に「grico」をオープン。美容業界を牽引するレジェンド美容師として美容師の新たな在り方に対し、常にアプローチを仕掛ける。芸能人、コレクションのヘアメイク、TV出演、アパレル業、商品開発、コンサルティングなど多方面で活躍。業界を超えて多くのメディアから注目されている。
Director桑名 真理子(くわな まりこ)
メイク技術者の目線を武器に、美容WEBマガジンの創刊、12年間で延べ1000件を担当。人の魅力にフォーカスする企画が得意。美容ライフが豊かになる、ワクワクする景色をつくります。
Photographer菊池 麻美(きくち あさみ)
多摩美術大学グラフィックデザイン科卒、2003年・2004年 CANON写真新世紀佳作。レゲエと海外旅行をこよなく愛するフリーランスフォトグラファー・シネマトグラファー。