人気美容師の『心技体』を紐解く! 「パフォーマンスアップメソッド」-REDEAL/中村 雄樹さん-【前編】
美容師の仕事のパフォーマンスを最大限発揮するためには、心と体、そして技術を常に磨き続ける必要があります。プロフェッショナルな人気美容師さんは、『心技体』のバランスを整えるために、どんなことを行っているのでしょうか? 今回は、はんぺんのニックネームで有名なREDEAL/中村 雄樹(なかむら ゆうき)さんの内面に前後編2本立てでフォーカス。今年、『心技体』に改めて向き合うできごとがあったという中村さん。前編では、そのきっかけになったこと、そして美容師として長く活躍するために大事にしたいことについて伺いました。
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SPECIAL CONTENTS
2021.08.02
独立後すぐのコロナ禍。長期に及ぶ睡眠不足と食生活の乱れで、体調が急変
―中村さんは、『心技体』を整えることの大切さを改めて実感したできごとが、最近あったとか?!
そうなんです。新卒で表参道のトレンドサロンに就職して、良くも悪くも尖ってきたというか、「美容師として有名になりたい!」という自己実現のためにひたすら走り続けてきました。もちろん入社したてのころは無名なのでそれが悔しくて…。
SNSなどを中心に発信していくうちに知名度もあがってきて、それが自分自身でも嬉しいし、同時にサロンの名前も更に売れるようになり、僕自身が自分のためにやっていたことが会社への貢献にもつながって評価されるようになっていきました。
忙しくて「中村くん、ちゃんと寝てる?」とか聞かれることもありましたが、美容師としての道を駆け上がっていくことが楽しかったし、忙しいことが大変と思ったことは一度もありませんでした。
一方で、会社という組織の中では、やる気がある後輩はついてきてくれるけれど、それ以外のスタッフからは距離を置いて見られていることもあったりして、それをなんとか克服したと自覚できたのが、ちょうど退社した時期のことです。
これなら自分でも組織を運営していけるだろうと独立をしてREDEALをオープンしたのが、25歳のとき。よく言われていることですが、25歳って体力が落ちやすい時期なんですよね。ちょうどコロナ禍が重なってしまったということもあり、情勢的に気持ちよく眠れるような時期でもありませんでしたし、睡眠時間を削ってやらなくてはいけないこともたくさんありました。
そのときは、経営者としての葛藤もいろいろと味わいました。やっぱり、自分がオーナーのお店だと、スタッフにはもっと頑張ってほしいという欲が出てしまうもの。でも、それは言ってはダメだろうとも思っていたので、口には出さないようにしていました。
20代半ばまでは、プレイヤーとして自分のことだけを考えて突っ走ってきました。経営者となった今は、さまざまな仕事を同時に抱えつつ、スタッフのこともきちんと考えなければいけないと思っていたからです。
スタッフに対して想いが深くなるにつれ、サロンづくりのヒントを知りたいと、他の美容師さんと熱く語ることが増えました。スタッフ育成や美容の情報交換など、トップランナーの美容師さんと会うことでいろんな課題がクリアになりましたね。
ただ、営業後にお会いするのでお酒の場に行くことが増えて、気づいたら睡眠不足だったり、食生活が乱れてしまっていました。
ビールを飲むので太らないように「米(炭水化物)を食べない」ダイエットしようとするのですが、僕の場合、きちんとした低糖質ダイエットというわけではなく自己流でした。営業はバリバリこなして、夜は飲酒、食生活が荒れて睡眠時間も少ない…今年の2月、僕はとうとう大きく体調を崩してしまったんです。
オーナーとして新卒に伝えたかったことは「頑張り続けられる体力をつける」こと
―しばらくサロンワークもお休みされたと聞いています。
はい。
最初は2週間ほど休養すれば治るだろうと見越していたのですが全然ダメで、お店はスタッフにまかせて、2月〜3月末まで休養を取ることになりました。このとき、心身のバランスというのが本当に大切だと痛感しました。
休養明けの3月末は、ちょうど新卒のスタッフが入社してくる時期。僕は、オリエンテーションで、自分の経験をもとに食生活の大切さというのを話しました。
振り返ってみると、僕のアシスタント時代は、お米だけは毎日2〜3合炊いてそれを保存容器に入れてサロンに持っていって、3パック入りの納豆と一緒に食べていたんです(笑)。
お金はないけど、お米は自分で炊けば安上がりだし、納豆も安いしおいしいからというそれだけの理由だったのですが、毎朝めちゃくちゃ食べていたので、エネルギッシュだったんですよね。集中力が続いたまま営業に参加できる。体的にも体温が高くて代謝がいいし、発酵食品を食べているのでお通じもいい。
朝食を食べないのがおしゃれ、みたいな傾向もあると思いますが、それだと集中力も続かないし、長期的な目線での成功には繋がらないばかりか、離職せざるを得ないような状況を招いてしまうかもしれない。
だから、学生から社会人になるタイミングで、新卒のスタッフには『早寝・早起き・朝ごはん』が大事だということを話しました。
―バリバリと突っ走ってきたイメージのある中村さんから、そんなメッセージを聞くとは、新卒のスタッフさんたちは意外に思ったかもしれませんね。
たしかに(笑)。でも僕は、規則正しい生活をしていれば、自然と頑張りやすい体になれるというのを伝えたかったんです。
体調を一度崩して持ち直したと思っていても、体によくない習慣そのものを改めないとまた何度も同じことが起こってしまうかもしれない。僕自身のことで言うと、25歳から先も体調を崩さずに駆け上がっていくために変えなければいけない部分を、全部というくらい変えました。
考えてみれば、スポーツ選手などでも長く活躍している人って、体にいい習慣を続けている人のほうが右肩上がりで成長しているもの。
このできごとはこれから先続く、僕の美容師人生の大きな転機となる経験でした。
―後編では、中村さんが具体的に実践している『心技体』を整えるためのメソッドについて教えてもらいます。
中村 雄樹Yuki Nakamura
埼玉県出身。埼玉県理容美容専門学校卒業。2015年に都内有名店に入社し、2年目で当時業界最速のカラーリング指名売上220万円を達成。インスタグラムでの集客力を武器に躍進。業界最年少でのセミナー講師、書籍制作担当、業界紙への多数掲載などを経て、2020年25歳にして大宮で「REDEAL」を立ち上げる。コロナ禍でのスタッフ早期育成に成功(オープン月1月は売上30万、同年12月には362万達成)。独立1年未満で書籍『タイムパフォーマンスを上ける6人同時エアタッチ』を出版するなど今後の活躍も注目。
Director桑名 真理子(くわな まりこ)
メイク技術者の目線を武器に、美容WEBマガジンの創刊、12年間で延べ1000件を担当。人の魅力にフォーカスする企画が得意。美容ライフが豊かになる、ワクワクする景色をつくります。
Photographer菊池 麻美(きくち あさみ)
多摩美術大学グラフィックデザイン科卒、2003年・2004年 CANON写真新世紀佳作。レゲエと海外旅行をこよなく愛するフリーランスフォトグラファー・シネマトグラファー。
Writer須川 奈津江(すがわ なつえ)
フリーランスの編集・ライター@東京東側。お仕事は美容師さんメディアでの執筆、教育、健康、レシピ本などの実用書・ライト文芸の編集などなど。