美容エディター注目の次世代のパイオニア! Find a STAR☆第5回・SALOWIN渋谷&New/杏樹×美容エディター/桑名真理子
bangs特集記事の編集担当にして、1000名以上の人気美容師を取材してきた美容エディターの桑名真理子が、今後の美容業界を担う NextStar美容師を直撃! 美容師としての歩みやこれからの野望、美容業界に対して伝えたいことや改革したいことを聞きます。
第5回目はシェアサロンSALOWINで活躍中の杏樹(あんじゅ)さん。
都内の有名店でアシスタントを務めていた杏樹さんですが、根っからの明るいキャラクターと場を盛り上げるワードセンスで、周囲の人から愛されてきました。昨年、Instagramのリールが大注目され、一躍みんなの人気者となった杏樹さん。杏樹さんが手掛ける#女っぽレイヤーや#エモメイクも好評です。
長い下積み時代を過ごし、デビュー後も伸び悩んだという杏樹さん。どんな美容師人生を歩んできたのか、インスタがバズったきっかけなどについて伺いました。
SPECIAL CONTENTS
2022.01.27
杏樹さんってこんな人!
岡山県出身。専門学校岡山ビューティーモード卒業後、都内の1店舗を経てALBUMに入社。3年間のアシスタント期間を経て昨年1月にデビュー。韓国風のスタイルなど、Instagramのリールで人気を集めたことをきっかけにそれまで自身で発信していた#女っぽレイヤーや#エモメイクも注目を集め、人気のスタイリストに。昨年11からはSALOWIN渋谷&New店に拠点を移し、活躍中。
「東京が楽しすぎて…!」2年遅れでスタートした美容師としてのキャリア
桑名真理子(以下、桑名):杏樹さんの第一印象はムードメーカーという感じで、お会いして2回目以降の現場でも、どんな場面も盛り上げてくれる人なんだなぁと思っていました。
特に、私が当時担当していた連載企画で、NNN代表のNOBUさんが美容師さんのゲストを招いて手料理を振る舞うというものがあったのですが、アシスタントとしてついて来ていた杏樹さんがいつも盛り上げてくれたんですよね。ゲストの方は大物の方も多かったのですが、緊張はしなかったですか?
杏樹:もともとそんなに物怖じするタイプではないですね。桑名さんとお会いしたお仕事では、NOBUさんがどうやったら気持ちよく仕事ができるかを考えていました。NOBUさんは意外と突っ込まれたがりだし、立場が上の人って周りが気を使いすぎて孤独になりがちじゃないですか。だから、絡んでほしそうなときはガツガツいって、気持ちよく仕事をしてもらうことを心がけていました。
桑名:杏樹さんの発言一つで現場の雰囲気がほぐれて、一気に盛り上がるってことが何回もありました。
杏樹:ありがとうございます。あと、ちょっとした瞬間に自分のこともアピールできたらいいかなって。
桑名:あ、そういう気持ちもあったんだ!(笑)がっつり爪痕を残してくれました。ところで、美容師としての歩みを教えてもらえますか?
杏樹:今、28歳なのですが、美容師歴は6年になります。岡山から上京して東京の美容専門学校に通っていたのですが、もうめちゃくちゃ東京が楽しすぎて学生としての本分がおろそかになってしまい、地元に戻って専門学校に入り直しているんです。だから、普通の人と比べると2年遅れでキャリアをスタートしています。
アシスタント期間は、新卒で入ったお店も含めてトータル5年になります。私は下積み期間が長くて、昨年1月にデビューしたばかりなんですよ。
明るく振る舞う一方で、涙を流したことも多かった下積み時代
桑名:そうだったんですね。サロンワークではNOBUさんの専属アシスタントというわけではなかったんでしたっけ?
杏樹:はい。もともとは桑原大貴さん(現C・crew)の作るスタイルに憧れてアシスタントにつかせてもらっていました。大貴さんは日本でも随一のバレイヤージュの技術が有名なので、とにかく難しい技術が多いんですよ。
杏樹:もちろん、アシスタントとしてお客さまのカラーを塗らなければいけないのですが、「今日もうまくできなかった」って営業終わりに泣きながら帰ったことが何度もありました。大貴さんも職人気質で「見て学びなさい」タイプの人だったので、とにかく練習して数をこなすしかなくて、当時は大変でしたね…。大貴さんにはトータルで3年付いていました。
杏樹:実は、私はデビューでも苦労していて、デビューチェックに2回落ちているんです。2年遅れなので年下のアシスタントたちと一緒にチェックを受けるのですが、彼らの方が先にデビューすることもあって、それがめちゃくちゃ悔しくて。
そんなに苦労したのに、デビューしてすぐはお客さまがつかないしパッとしない毎日で……。私は中学生のときから「『情熱◯陸』に出るくらい売れる!」という夢があったのにそれとは程遠い現実でした。
フォロワー数は半年で2万4000人増! 改めて注目された#女っぽレイヤーと#エモメイク
桑名:私が思うに、杏樹さんはそんな苦境から昨年1年間でもっとも伸びた美容師さんのうちの一人なんじゃないかと考えているんです。どんな努力をされたんでしょうか?
杏樹:とにかくInstagramですね。売れている美容師さんはやっぱりInstagramがすごいと思って。皮肉なことに時間はあったので、再生数の多いリールをマネした投稿をしたらめっちゃ再生数が伸びたんです。インスタの調子がよくなってくると、オーナーから直々に激励がくるんですよ。
「インスタは習慣。“歯磨き”だと思って、この調子で毎日必ず続けてください」って(笑)。オーナーがそう言うなら頑張らないと、と1日2投稿はしていましたね。続けるうちにどうしたら伸びるのかセオリーがわかってきました。具体的には、私のリールは、1カット1秒。音楽にのせてテンポよく編集することで、飽きずに見てもらえるようになっています。2〜3か月で集客にも繋がり、予約が埋まるようになりました。
桑名:杏樹さんが打ち出している#女っぽレイヤーや#エモメイクは、どのようなきっかけで誕生したんですか?
杏樹:最初にバズったのが、韓国風のレイヤースタイルだったのと、自分のヘアもたまたまレイヤー。加えて、私はデビューチェックもレイヤーで受けていたので、「これだ!」と。#女っぽレイヤーが誕生しました。
杏樹:メイクはもともと好きで、アシスタント時代に撮影に付いていったときに、メイクするチャンスをもらえたことが結構あったんです。めちゃくちゃかわいいヘアに施すメイクを失敗できない! と思って研究をして、「私のメイクってこんな感じかも」というのができ上がってきたときに、またしてもオーナーから「杏樹さんのメイクに名前をつけましょう」って言われて。
杏樹:よく、自分の名前を冠したメイクの名前がありますが、あんまりピンとこなかったので、そのとき流行っていた『エモい』という言葉を使って、#エモメイクに決めました。本当はメイクもメニューに加えたいのですが新型ウイルスのこともあるので、今は検討中です。
自分のことは話さない。お客さまの話を100%聞いてあげたい!
桑名:フォロワー数が半年くらいで2万4000人くらい増えたんですよね。めちゃくちゃすごいことだと思うのですが、実際に足を運んでくださるお客さまには、どんな気遣いをされているんでしょうか?
杏樹:私は、とにかくお客さまの自己承認欲求を満たす、ということを一番に考えています。
美容師って、お客さまにとって家族にも友達にも言えないようなことを話せる絶妙の距離感の存在ですよね。だから、悩みを聞いたり、ご自身が気づいていない良いところをたくさん見つけて褒めて差し上げたいんです。自分のことを話すのが得意な美容師さんもたくさんいると思うのですが、私の場合は100%お客さまの話を聞きたいんです。
桑名:そんな杏樹さんが、昨年11月から選んだのがシェアサロンという道でした。何を思って決めたのか、教えていただけますか?
杏樹:私ももう28歳で、30歳を前にして色々考えたというのがすごく大きいです。具体的にはいくつかあるのですが、まずは、自分の価値を高めたいと考えたこと。次に、新しい場所で働く挑戦してみたかったということ。そして、自分の時間を作って自己投資をしたいということでした。
同じ年の女性美容師さんと話すと、「いつまでこうやってがむしゃらに働き続けるんだろう。仕事以外の人生のことも考えないと」と思っている人がすごく多いです。
それが叶えられるのは、ある程度自分の時間を自由に使えるフリーランスということで決断しました。
桑名:そうだよね。女性ならではのライフイベントのことも考えますよね。そういう女性の働き方という点も含めて、美容業界に思うことはありますか?
杏樹:美容師一本でがむしゃらに、というのもいいけど、美容師をやりながら何か他の仕事をしたり、肩の力を抜いた多様な働き方ができる業界になっていってほしいなと思います。
私、桑名さんの若手を引き上げる力は本当にすごいな、と思っていて。個人的にはいずれは後輩育成や指導みたいなこともやってみたいです。
桑名:絶対向いていると思う! そしていつか『情熱◯陸』に出るくらい有名になって、私も番組に一瞬で良いので出してほしい(笑)!
杏樹:(笑)。もちろんです!
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杏樹あんじゅ
岡山県出身。専門学校岡山ビューティーモード卒業後、都内の1店舗を経てALBUMに入社。3年間のアシスタント期間を経て昨年1月にデビュー。韓国風のスタイルなど、Instagramのリールで人気を集めたことをきっかけにそれまで自身で発信していた#女っぽレイヤーや#エモメイクも注目を集め、人気のスタイリストに。昨年11からはSALOWIN渋谷&New店に拠点を移し、活躍中。
Director桑名 真理子(くわな まりこ)
メイク技術者の目線を武器に、美容WEBマガジンの創刊、12年間で延べ1000件を担当。人の魅力にフォーカスする企画が得意。美容ライフが豊かになる、ワクワクする景色をつくります。
Writer須川 奈津江(すがわ なつえ)
フリーランスの編集・ライター@東京東側。お仕事は美容師さんメディアでの執筆、教育、健康、レシピ本などの実用書・ライト文芸の編集などなど。
Photographerトカジ ショウタ
人気美容師として活動する一方で、写真&映像クリエイターとして活躍中。サロンのIV/CM/コーポレートビデオ、芸能事務所のMVなども手掛け、業界から注目される。